解釈も自己責任でやるしかない

金井:僕の世代というのは、辛うじて現役の時代の堤さんとの、お付き合いを末席でしていた世代なんですよ。末席の世代だから、僕たちの後の世代というのはもう直接、堤さんと関わった人はいないわけですよね。だから僕が直接触れる前の堤さんの発言とか、考え方ということを気になって調べながら、ある意味、無印良品がどうあればいいんだろうみたいなことは考えてきているということです。それを無印良品の探究という言い方をしてきています。

 だからある意味、(堤氏の考えなどについて)書いてある文章をどう膨らませて考えるかということが無印良品を探究する上で大変重要です。いまいろいろ取り組んでいることは、おそらく、そうではないだろうかというふうに思ってやっています。正しいかどうかは分からないけど、僕たちなりにそれは世代が変わったわけだから解釈も自己責任でやるしかないわけです。

 ただ、そのときに事業として堤さんのように、いろいろな会社をいっぱいつくってみたいなことのデメリットは見ているので、僕たちもいろいろな事業をやっているように見えるけれども、思想とかコンセプトを発信することが目的です。それぞれの事業で、大きな会社をいっぱいつくりたいというふうには思わない。

19年に開業予定のMUJI HOTEL(仮称)の完成予想図。新設する無印良品の旗艦店と同じ建物にオープンする。

無印良品のコンセプトを取り入れた「MUJI HOTEL(仮称)」が2019年春に東京・銀座に開業予定です。堤氏はかつて、無印良品のホテルをやりたいと言っていたそうですね。

金井:無印良品がまだ300億円も売っていない時代ですね。つまりまだ「MUJI」という呼び方がなかった時代です。そのころから、無印良品のホテルだとか、無印良品の旅行だとか、すべて、無印良品の概念でつくることで、いいものができるという確信があったのですね。堤さんは、その無印の概念について、消費社会へのアンチテーゼという思いで「反体制商品」と言っていましたが。現状の住宅、ホテル、旅行などすべてを、アンチテーゼの目でみるということですね。

 それくらい自由競争の中で、産業全体が商業主義的な構造になってきたことに対する、問題意識でしょう。堤さんは「消費の対象とならないものは、すべて無価値だ」と考える社会に対する批判精神がありました。無印良品が世の中に出たときは、高級ブランド品が全盛になっていった時期です。ホテルで言えば、ラグジュアリーホテルがあります。そういう方向にだけ向かっていくようでは、社会も経営者も、成熟度が足りないのでは、という思いですね。

例えば、旅行でいえば、至れり尽くせりの贅沢なサービスが付いているというよりも、本当に必要なものだけに絞って、価格を抑えるというようなものが、無印の考え方に沿った旅行商品になるだろうと。

金井:そうです。

銀座につくる「MUJI HOTEL」ですが、運営などは外部企業に任せて、良品計画自体は大きな投資はしないのですね。

金井:そうですね。僕たちは開発も運営もやらない。言ってみれば、経営はしないのです。ただし、こういう考え方のホテルがあれば、皆さん多分喜ぶのではないか、というコンセプトをつくります。僕たちは、家具など商品もつくってきたし、店舗の空間デザインも、磨いてきたと思うので、そういうノウハウを提供すれば、そのホテルの経営としても立ち行くと思ったのです。無印良品というものが何を考えているかということが伝わり、あるいは間接的に無印良品の空間や家具が魅力的で、いいものだよねというふうになればいいなと。MUJIの思想が伝わればということを思っている。そうしたことがメリットですね。