「名誉だけ」の創業家は危険

 創業家には事業継承の問題が必ず付いて回ります。今は問題がなくても10年先、20年先には必ずこの問題が待っている。ですから早めにシナリオを作っておく必要があります。重要なのは、事業面と財産面の両方で手を打っておくこと。特に財産の継承はやり直しがきかない。株は散逸したら取り戻すのは容易ではありません。

 では、なぜここにきて創業家を巡る問題があちこちで噴出しているのでしょうか。

 理由の一つは、グローバル化が進み、時代が変化するスピードも速くなったことで、創業家が当初作り上げたビジネスモデルが陳腐化しやすくなっていることが挙げられるでしょうね。結果的に、創業家の存在意義が薄れてくる。理念は生きていても、少なくともビジネスのやり方は通用しなくなっているんです。ただ創業家にも名誉とプライドがあります。創業一族に実力があれば経営に参画して現経営陣と一緒に会社を伸ばせるのかもしれませんが、名誉しか持っていないと問題になることが多い。創業家と経営陣とが揉めるケースでは、創業家が名誉だけを振りかざしていることが圧倒的に多い。会社は創業家だけのものではないのですが、それに気づかず、視野が狭くなってしまうんです。

 いずれにしても、争いを表面化させないことが大事でしょう。表に出たら従業員をはじめとしたステークホルダーは不安になりますからね。経営陣と創業家は絶対に衆人環視のなかで(格闘技の)リングに上がってはいけないんです。拳を振り上げる前に、第三者を介してコミュニケーションを取ることが大切だと思います。