創業一族間の対立で会社が危機に

 創業者の子供たちの仲が悪く、会社の舵取りを巡って争いが生じることも珍しくありません。これを避けるための方法は会社分割でしょう。創業家の兄弟がともに経営陣に入っていて、双方に確執があるようなら、たとえば製造部門と販売部門とを分離し、それぞれが分離後の会社のトップとして独立して経営してもらう。これならば兄弟は自由に報酬を決められますし、頻繁に顔を合わせないで済みます。

 資金的に余裕があれば、他社を買収して兄弟のどちらかを買収先会社のトップに据えるのも有効です。たとえば食品販売業であれば、レストランチェーンを買収し、弟をこの会社のトップに据える。本社の社長を兄にして、双方を引き離す形です。買収により株式評価額は下落することが多いので、創業家にとっては相続税対策にもなります。

 創業者が事業継承する際に絶対に避けなければならないのは、会社の株を関係者に均等に分けてしまうことです。

 たとえば創業者の父親が死亡し、その息子が経営を引き継いだとしましょう。株式の半分はこの息子が相続し、残り半分は経営に興味のない娘が持つ形になりました。息子は会社を成長させるのに成功し、株価の評価額は上がりました。困るのは娘です。自分は会社の経営に携わっていないから、成長の果実は得られない。一方で、保有する株式の評価額ばかりが上昇し、相続税もうなぎのぼりに上がってしまう。一般の人ではとても払いきれないような、数億円規模の相続税がのしかかってくる場合もあります。

 そこで娘が取る手段が株式の買い取り請求です。「お兄ちゃん、10億円で私の株を買ってよ」といった具合ですね。たとえば売り上げが数億円程度の会社が10億円もかけて自社株買いをするのは容易ではありません。仮に買い取ったら会社のキャッシュフローが厳しくなり、成長投資ができなくなってしまう。かといって無視もできない。買い取り請求がきたら何らかの対応をしないといけないし、仮に競合にでも売られたら大変なことになるからです。

 最悪なのは社長である息子が個人的に借金して株を買い取ることです。たとえば10年ローンで銀行からお金を借り、株式を買い取ったとしましょう。息子は毎年1億円返さないといけないわけですね。役員報酬は最低でも2億円程度ないと厳しいでしょう。それでも1億円の借金を返して、所得税や住民税を払ったら、手元に残るのは数百万円程度になってしまいます。下手したら従業員より安い生活費しか残りませんよ。

 だけど従業員からは不満が出る。「自分たちが汗水垂らして稼いだ金なのに、社長が報酬で持っていってしまう」と人心が離れていくわけです。それに中堅・中小企業が2億円も役員報酬を支払っていたら、まともに設備投資なんかできませんよ。人材がいなくなり、先行投資もできない。待っているのは破綻です。実際、にっちもさっちも行かなくなってうちに相談に来る会社もあります。