ベネッセ安達社長「資本と経営の分離はできている」

福武氏の意中の人だったベネッセホールディングスの安達保社長

福武氏の言動からは、ベネッセの事業、特に教育についての関心というのが薄いように思います。中興の祖であることは間違いありませんが、教育事業への関心の低さや、経営を社外のプロ経営者に任せる傾向が、今のベネッセが抱えている様々な問題を招く一因になってきたのではないでしょうか。

安達氏:福武さんの興味がどこにあるのかはコメントを差し控えたいけれども、非常に興味が広くいろいろなことを活動的にやっておられるので、逆に言えばあまり会社のことに深く入ってこられない。そういう意味では資本と経営の分離ができている。

とはいえ、原田・元会長兼社長や安達社長の招聘もそうですが、トップ人事に大きな影響を及ぼしています。

安達氏:確かに今まではその通りかもしれませんが、社内を見ていると、経営層が十分に育っていないという課題もあります。オペレーションについては非常にしっかりして素晴らしい人材がたくさんいますが、もう少し広い視野で経営をできる人材が育っていないのは事実だと思う。これから3~5年のスパンで、とりあえず100人、ポテンシャルのある幹部候補のリストを作り、育成計画をみんなで議論していきたい。

 これまでは、創業者の福武哲彦さんがいて、その後を總一郎さんが継いで、ある意味、創業家が経営をやってきたわけだけれども、これからはそういう時代ではないですから。

福武氏は、ニュージーランドに移住し、日本には将来がないなどと発言しています。教育、介護という未来の日本を支えるべき会社の大株主であり、創業2代目の言動として、非常に違和感があります。

安達氏:福武さんの、日本の未来が暗いといったネガティブな発言は、おそらく、国の政策だったり、国のリーダーのあり方に対しての見方だと思います。私にも、そういう感覚はあります。多くの日本人が、そういう感覚を持っているのではないでしょうか。

 福武さんは行動力のある人だから、バーンと行動や発言に出てしまう。しかし、瀬戸内国際芸術祭など、ああいう文化を広める活動に多くの支援をしている。さらに言えば、国がそういうことに対してちゃんとしないから、民間企業として教育や介護をもっとちゃんとやっていこうと考えている。そういう気持ちが強いのだと思います。

 福武さんは日本の教育や介護を否定しているわけではなく、逆に、海外にいるからこそ日本の問題がよく見えるのでしょう。そこから、日本を変えていこうという気持ちが、福武さんにはあるのだと思います。

福武氏が力を注いでいる瀬戸内海の直島での事業について、現在のベネッセ経営陣はどのように位置づけていますか。

安達氏:なかなか難しい質問ですが、直島はここ十数年の歴史です。ベネッセ、あるいは福武書店にはもっと長い歴史があり、若干後付け的なところもあるかもしれませんが、直島が世界で認められて、ベネッセのものであるというのは、社員も含めて誇りになっている気がします。

 教育、あるいは生活を原点に事業を展開しているのだけれども、それを昇華させて文化にしていくシンボルとして、直島を持っているというのは、ゆくゆくは大きな財産になると考えています。

 私も何度も訪れていますが、素晴らしいと思いますよ。あれだけのものを創り、広げているというのは。

福武氏の中では、安達社長はずっと意中の人でした。原田・元社長の退任も、安達社長への引き継ぎを前提に社外取締役が動いたのではないでしょうか。

安達氏:原田さんはご自身で判断されたと思いますよ。もちろん、(退任を決める)前の取締役会でもいろいろな議論というのは当然あったんだろうと想像しますが。

就任に当たっては、福武氏からはどのような言葉をかけられましたか。

安達氏:基本的にはまず社外取締役から話がありました。社外取締役と大株主である福武さんとは、当然、話もされたんだと思いますけど、基本的には「とにかく任せる」ということですよ。