「本郷猛」と「キャプテン・アメリカ」に共通する凄み

ディズニーによる買収後、マーベルの日本でのマーケット規模は拡大していますか。

:徐々に広がっていると感じますね。ディズニー傘下になって、イベントが増えましたし、雑誌で特集が組まれるようにもなった。ウォルト・ディズニー・ジャパンの努力のたまものだと思います。数字は公表されていませんが、ビジネスの規模は確実に大きくなっているでしょう。

今後、そのスピードは加速していく?

:2017年1月に映画「ドクター・ストレンジ」が公開されますが、間違いなくヒットするでしょう。日本でも人気の俳優ベネディクト・カンバーバッチが主演ですから、PRもしやすいはず。「ドラマ『SHERLOCK』で大人気のあのカンバーバッチが…」という宣伝フレーズで、マーベルをよく知らない客もつかめます。

 ただ、本音を言えば、そうしたフレーズではなく、映画の内容をアピールするような宣伝に力を注いでほしい。とかく、日本の映画PRって、表面的で安易なものになりやすい。その結果、コアなファンの反感を買っては、最悪な結果になってしまいます。

最悪な結果とは?

:マーベルにも、ヒット作に恵まれず、ファンが離れていく「冬の時代」がありました。そうした時代に、ライトなファンはすぐにいなくなりますが、コアなファンはマーベルを支え続けます。だから、コアなファンだけは大切にしなければならない。

 ライト層にアピールして映画の観客動員数を増やすことはビジネス上、重要な戦略ですが、コアなファンを失うことだけはしてはいけません。

最後に、マーベルでもっとも好きなキャラクターを教えてください。

:ヒーローでは、「キャプテン・アメリカ」ですね。映画でも「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」がナンバー1です。

その理由は?

:人として尊敬できる、憧れの存在です。「キャプテン・アメリカ」のような意志の強い人間になりたいと、常に思っています。かつては、日本にも「キャプテン・アメリカ」のようなヒーローがいたんです。

 「仮面ライダー」の第1作、知っています? 仮面ライダーに変身する、藤岡弘さん演じる本郷猛。あのキャラクターは、「キャプテン・アメリカ」に通じる、カッコよさがありました。正義感が強く、こんな大人になりたいと思わせる凄みがありました。でも、最近の日本のヒーローは、なんか軽くなってしまった。大人感がないというか。「キャプテン・アメリカ」には、いつの時代も不変のカッコよさがあります。

「キャプテン・アメリカ」のほかには?

:「キャプテン・アメリカ」と、先でもお話した「X-MEN」に出てくる悪役マグニートーが双璧です。この2人は、表裏の関係。「キャプテン・アメリカ」は肉体的には虚弱ですが、国のために尽くしたくてわざわざ志願し、超人兵士になって戦争を戦う。一方、マグニートーは、戦争で耐え難い苦痛を味わい、本来であればならなくてもいいヴィランになってしまった。

 お互い、戦争がなければ普通の人として生きられたんです。この2人の存在によって、私は戦争について深く考えるようになりました。そういう意味でもこの2人は欠かすことのできないツートップといえる存在で、ある意味、マーベルのあり方を示しているとも感じます。

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