マーベルとDCは「巨人と阪神」

マーベルの人気拡大に欠かせないのが映画ビジネス。映画の持つ役割を説明してください。

:さまざまなヒーローを紹介できることが大きいですね。先ほど話に出たように、最近は「アベンジャーズ」や「シビル・ウォー」など、ヒーローがまとめて登場する作品が映画化され、埋もれていたヒーローも注目されるようになりました。

 「ドクター・ストレンジ」や「キャプテン・マーベル」の公開も控えていますし、今後、「マーベルへの入り口=映画」という図式はより強まるでしょうね。さまざまなキャラクターを知ると、自分の好きなヒーローが明確になる。それがマーベルの人気が高まっている要因です。

ヒーローだけに限りませんね。ヴィラン(悪役)のファンも多いです。

:そうなんですよ。映画「アベンジャーズ」では、悪役のロキが大人気になりました。これほどファンが増えるとは予想外の展開でした。マーベルのキャラクターは、単純に善と悪に分かれているのではなく、奥深い哲学を持って魅力的に描かれているといえますね。

アメコミの2大出版社といえば、マーベルとDC。DCも出版社の枠を超え、ヒット映画を生み出していますが、両者に違いはありますか。

:あくまで私個人の見解ですが、マーベルは「自分の延長線上にある世界」。だから、ヒーローは絶対的な突き抜けた強さというより、何かが起こったら助けに来てくれそうな身近な雰囲気がある。そこに親しみが持てます。

 一方、DCは「神話の世界」。神々の物語なんですよ。アメリカでは、「アメリカ合衆国という国は歴史が浅いので、独自の神話や独自の神々を持っていない。そこで、人々は神を求めている。その神としてスーパーマンやワンダーウーマン、バットマンがいるのだろう」と言われています。神話の世界に通じる叙事詩的な楽しみ方ができるのがDCだと思います。

おもしろい分析ですね。

:たぶん、「アイアンマン」が街にいたら、みんな握手を求めるだろうけど、「スーパーマン」(DCのキャラクター)だったら、あっけにとられて近寄れない。「バットマン」(DCのキャラクター)も怖くて、遠くから拝んじゃう(笑)

「バットマン」には握手を求めないですね、私も(笑)

:ただ、私は、どちらもファンです。両者の切磋琢磨があってこそ、アメコミは盛り上がります。いいライバル関係ですよ、巨人と阪神みたいな。

次ページ 「我々は一生、ディズニーと付き合っていける」