マネジメントの尻拭いを現場がやっている感じですね。

守島:日本の中間管理職はまじめです。すべてにおいて満点を取らないといけないと思い込んでしまいます。しかし現実としては、満点でなくとも、顧客がある程度満足して、商品が売れればいいわけです。経営側は本来、物事に優先順位をつけてあげる必要があります。そうした責任を果たしていないため、過労死など現場の疲弊が起こります。

限界まで頑張ってしまうといいますか、過大な責任感から問題を抱え込んでしまうのは日本の組織文化なのでしょうか。

守島:バブル経済崩壊の後に、極めてきつく成果を求められるようになったのは重いと思います。進捗管理、成果管理、目標管理、コスト管理、様々な観点から表現できますが、現場から柔軟な思考が失われていきました。これではいけないと、一部の企業では一定の揺り戻しもみられましたが、リーマンショックという大きな打撃もあり、総じてこの影響は続いています。

 経済成長が続く時代ではもはやない以上、現場任せではなく、現場が疲弊せずに機能するような仕組みを経営側が整える必要があります。

 現場が機能しないと仕事が回らないのは、どの国、どの企業でも同じです。人を育てる、コミュニケーションがある、理念が共有されているなど、多様な積み重ねで現場は成り立ちます。そのプロセスが失われつつあるのは、日本企業にとってクリティカルな問題だと思います。

現場の再設計は経営側の責任

欧米はどのように対応しているのでしょう。

守島:欧米は職務主義ですから、各人の業務範囲が決まっています。不都合が出てきた場合、人を増やしてその範囲をカバーするのか、すでにいる人の範囲を広げてカバーするのか、経営側が判断します。良くも悪くも現場は考えません。現場の頑張りに依存しないわけです。現場に依存すると、業務が難しくなるにつれ「漏れ」が目立つ羽目になります。

 こういう言い方をすると突き放したように聞こえるかもしれませんが、日本の状況を考えると、今は現場に期待できない時代です。現場は判断を間違えるものです。火事場の馬鹿力に頼るのも限界があります。回らなくなっていることを前提に、経営側の責任で現場をデザインし直す必要があります。

具体的には日本企業としてどのような対応が考えられますか。

守島:まず人員が仕事量に対して本当に見合っているのかが重要です。目の前の仕事に対する余裕、さらには次の世代を育てていく余裕、両方に目配りすべきです。

 日本の企業はより専門性を重視しないといけません。従来のモデルはアマチュアを雇って徐々に専門家に育てるという内容でした。しかし今はそうした余裕が乏しくなりつつあります。あえて大げさにいいますが、旅客機を作ろうというときに、アマチュアを航空機のプロに育てる過程と、プロジェクトを進める過程をシンクロさせるのは無理です。必要に応じて外部の専門家をきちんと活用できる組織にしておくには、やはり欧米のように職務内容を明確化するのが前提条件となります。

 もうそろそろ、現場は経営側が責任をもってデザインするべきもの、作りこんでいくべきものという認識を持たなくてはいけません。現場から成果を期待するのであれば、何が必要なのかを経営側が真剣に考える局面に入っています。