「飛び地」に挑まないのは、根本的な間違い

新たな挑戦で、成功するかどうかは分かりません。

三品:だからこそ、最初は小さく始めるのです。

 アップルはiPhoneのために工場を作ったりしていませんよね。2008年に「iPhone3G」を投入し、それが成功したことを見極めてから、徐々に小さな会社を買収して機能を強化していく。これが本来のリスクテークのあり方なんです。

 米グーグルも米アマゾン・ドット・コムも、最初のビジネスは小さなサーバーでできる範囲にとどめていました。お客さんが付いて資金が回り出してから、本格的に投資を始めました。

 インターネットの登場で様々なビジネスが大きく変わり始めた時期に、グーグルは広告で、アマゾンは通販でそれぞれ最適な「立地」を押さえました。「揺籃期」なら市場規模はまだ小さいので、少額投資でも大きな存在感を示せます。その後、市場の成長に合わせて投資を増やしていけばよいのです。

 一方の日本企業は、経営陣が臆病で未経験の事業を判断できません。成熟産業でも新たな事業機会はどんどん立ち上がっているのに、「お手並み拝見」と眺めているだけ。経験を積んで勝手が分かる事業以外には、投資する勇気が無いのです。

 「飛び地」には行かないと宣言する経営者がいますよね。あの発想は根本的に間違っています。自らの経験のみを重視して、世の中で新たに登場するニーズや可能性に興味を持っていないというのと同義ですから。

戦略的に「立地」を押さえるのではなく、後から挽回しようとするから失敗してしまう。

三品:そういうことです。慣れ親しんだ事業が成熟してくると、状況を変えようとして大型投資に走るわけです。ある意味で乱暴な手法で勝ちを収めようとする。これが多くの失敗の共通点です。

 日本企業がそういう乱暴な経営をしてしまう理由はもう1つあります。社長の任期が4~6年と短いことです。3年の「中期経営計画」を2回転して退任するのが典型的なパターンになっています。

 この6年の期間で歴史に名を刻むには、小さな事業を育てていくのでは間に合いません。機が熟しているかどうかは関係なく、何らかの勝負に挑む必要があると考えるのでしょう。だからこそ、「高値づかみ」だと分かっていても後には引けないのです。

 後任の社長も失敗をすぐに修正できません。多くの日本企業では実績と経験に基づき、前任社長が後継者を指名するケースが今も続いているからです。

 そうした意味からも、ガバナンス改革を急がねばなりません。

 「執行」に携わるのは経験主義の中で育ってきた人でもいいんです。日本企業が強みとする実務では、経験が絶対に必要ですから。一方で「経営」する人、戦略を描く人はその延長線上では育ちません。ここをちゃんと区別する必要があります。だからこそ指名委員会の役割が大きくなると考えています。