経験を積んだ事業なら、失敗確率は低いのか

計算上は、米国企業でも日本企業でも「損失の期待値」は同じようなレベルになると思います。

三品:ここで、リスクのもう1つの側面を考えねばなりません。最悪のケースに陥ったら、最大でいくらの損失が発生するかということです。

 仮に発生確率が0.1%程度に過ぎなかったとしても、不運が重なることはあり得ます。そうした時に、財務が耐えられるのかを考えておかないといけません。投下金額の絶対額を自社の財務体力と比べる必要があります。

 堺市に巨大な液晶工場を建設したシャープと巨費を投じて米ウエスチングハウスを買収した東芝は、2つ目のリスクを見誤ったのです。文字通り社運を賭けたわけですが、大きく転んで債務超過に転落してしまいました。

 CFO(最高財務責任者)がCEO(最高経営責任者)の部下のようになってしまい、財務面からブレーキをかけられなかったのが1つの原因でしょう。

シャープも東芝も、事前に「損失の期待値」については計算したのではないでしょうか。

三品:そうでしょうね。挑戦する事業からもそうした考えが見てとれます。

 シャープの場合は液晶を長年手掛けてきたので、テレビ事業なら何とかなると考えていた。東芝は数十年間にわたって原子力ビジネスを手掛けてきたので、米国でも原発建設をこなせると思っていた。

 三菱重工業のMRJも同様です。米ボーイングの下請けで経験を積んでいますし、防衛省向けの戦闘機も手掛けている。航空機に関しては全くの素人ではないという自負があるでしょう。

 つまり、自分たちが経験を積んでいる事業ならば、まさか手痛い失敗にはならないだろうと思い込んでいるわけです。失敗の確率が低ければ巨大な投資をしても大丈夫。そういう理屈なのです。

全く見知らぬ場所ではなく、経験の通用する領域で勝負するのは当たり前のように思えます。

三品:皆さんここで計算違いをするのです。事業の中身は、時代や置かれた立場によって全く異なるからです。