作品の弱点を把握して理論武装

製作資金の出し手となる企業などの理解が得られなくなります。

:その状態が3作続いた後に、次は何を作ろうか、というタイミングで私が提案したのが北野作品の十八番といいますか、いわゆるバイオレンスアクション、バイオレンスエンターテインメントです。これは決して「その男、凶暴につき」などに原点回帰するわけではありません。北野監督は「HANA-BI」や「BROTHER」など様々な作品を経験しており、以前とは違うものができるとの読みがありました。

 キャスティングを全面的に考え直してもらうことも北野監督にはお願いしました。過去の作品を想起させないように、今まで北野組では起用していない役者陣をそろえるのが狙いです。

そうして誕生したシリーズ1作目の手ごたえはいかがでしたか。

:観客動員としては80万人程度で、決して悪くはありません。ただ目標の100万人にはやや及ばず、大ヒットとまでは感じませんでした。そこで私から北野監督に2作目を作りませんか、と持ちかけました。北野監督の反応も悪くなく、2作目の「アウトレイジ ビヨンド」の製作がスタート。2作目の公開にぶつける形で1作目のDVDを発売するといった宣伝戦略もかみ合った結果、ヒットにつながりました。そして2作目を撮っている途中に、北野監督の中でイメージが膨らんで出来上がったのが今回の3作目です。

製作にあたって重視していることは何でしょうか。

:スタッフに常々言っているのは、前作がどうだとか、1作目がこうだから2作目はこうだとか、決めつけるのではなく、あくまで新しい作品を作ろう、ということです。もう1つ付け加えれば、これで最後かもしれないという危機感、緊張感を持ってほしい。次もあるさ、と思わないでほしいということです。興行的に大失敗したり、何らかの要因で映画が作れなくなったりするかもしれません。

 自分たちが手慣れた作業というか、あうんの呼吸でできてしまう部分もあるとは思います。しかし従前のやり方で取り組んでいては、新しいものを作ったことにはなりません。観客に対しても、新作として楽しんでもらえるだけのクオリティーを提供できなくなります。そうした「慣れ」は徹底的に排除してきました。仲間内で自分たちが気に入ったものを作って喜ぶのは、ビジネスとは言えません。

作品を作り込むのと同時に、どう世の中に売り込むかも大事ですね。

:まず最新作はどういう作品なのか、位置づけを明確化する必要があります。(出資元の)製作委員会の関係者全体を含めて十分に議論して、同じ方向性や意識を共有する作業が重要です。この過程は避けて通れません。

 また、早い段階でやるべきなのは、マイナス要素のあぶり出しです。作品が嫌われる、批判される、あるいは弱点があるとしたらどの部分なのか、様々な角度から関係者で検証していきます。例えば、暴力シーンがいかにもおぞましい、といった点です。

 批判的な検証を通じて作品の内容を消化できると、宣伝ではどういうキャッチコピーが有効か、作品のビジュアルを媒体でどう流すか、メディアに対して監督がどんな内容を語ればいいのか、理論武装のポイントが見えてきます。弱点を薄めることができるでしょうし、むしろ逆手にとって先手を打つ、といった戦略を考える前提になります。

 例えば、作品を見て不快に感じる方がもしいるとしたら、別の見方をしてみませんか、この作品を10倍楽しむにはこの場面はこう解釈したら面白いですよ、といった展開が可能になります。弱点を1つのセールスポイントに仕立てるくらいのしたたかさが大切です。その後も外部の反応を見ながら、検証作業を繰り返していきます。