「友達非公開」でも分析可能

上の画像は、ボヤージャーのシステムで、日本の公安関係者が監視している中核派のメンバーの人脈を分析してもらったものだ。この人物はフェイスブック上などで友人関係を非公開にしているが「例えば友達の友達のリストが公開になっているだけで、多くのことが分かる」と同社のデータアナリスト、ナーマ・ゾレア氏は語る。
さらにフェイスブックやツイッター、ユーチューブ、インスタグラムなど主要SNSのデータを網羅し、投稿の内容や「いいね!」のつながりなどを分析する。ボヤージャーが分析しているのはウェブ上で誰でも閲覧できるオープンデータだけだが「私たちは自分で思っているより多くのデータをウェブ上に公開している」とゾレア氏は話す。
写真の真ん中に位置するのが監視対象者だ。周囲にある丸はつながりのある人物を示していて、その特性で色分けされている。
最も多い青い丸は「Noted」。プロフィールなどが公開されており、素性を調べやすい人物だ。赤は「Top Connected」で、監視対象者と特につながりが深いと目される人物だ。黄色は他のグループとの橋渡し役となっているとみられる「Mediators」。Mediatorの人間関係をたどると、中核派がバックアップをしているとされる別の極左団体のアカウントに行き着いた。
中央の上に1つだけある緑の丸は「Ghosts」。監視対象者の近親者、もしくは「裏アカ」の可能性が高いと判定されたものだ。Ghostと監視対象者の名前をSNS上やグーグルの検索機能で調べても、明確な関係は浮かんでこなかった。しかし、確かにGhostが話題としているテーマには中核派に関するものが多い。GhostはSNSに投稿された行動の類似性などから判定するという。
監視対象を組織にして分析することも可能だ。ハッカー集団「アノニマス」とみられるツイッターのアカウントを調べてもらったところ、ある日本人男性が浮かび上がってきた。「彼は様々な関連アカウントとつながっており、メンバーの1人なのかもしれない」とゾレア氏は推測する。
ボヤージャーのシステムは法執行機関の捜査や金融機関の信用調査などに使われているが、同社はその技術を応用したマーケティングツールをEC(電子商取引)サイトなどに販売している。米オラクルやベンチャーキャピタルは、その将来性に期待して、1億ドル以上の資金をボヤージャーに投じている。一見市場が小さいように思える監視ビジネスだが、民間にも広く展開できる可能性があるのだ。
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