電気刺激で筋肉を動かしても脂肪は減らない

 やはり筋肉を動かさなければ、脂肪は消費されない。「じゃあそこで!」と思いつくのが、電気刺激で筋肉を動かして鍛える器具だ。宣伝ではかなりの効果があるようだが…。

 「電気刺激で動かすことで筋肉ができる、強くなるということは、なくはないですね。ケガで運動ができない、あるいは特殊な例ですが、宇宙から帰還して筋力が弱くなっているなど、リハビリが必要な筋力レベルの人であれば、効果があった例はあります。ただ、それだけで能動的な刺激による筋肉強化と同じレベルかというと、効果は小さいとしか言いようがありません。コマーシャルなどでは、お腹につけることで腹筋の6パックができるような表現をしていますが、器具だけで割れるわけではありませんよね? 他の厳しいトレーニングを積み、摂取カロリーをコントロールしている人だから、美しい腹筋を作れているのでしょう。それにお腹周りの体脂肪を減らせば、誰でも6パックは現れます」(中野さん)

 できるだけ楽をして、引き締まった腹筋を手に入れたい心情は十分に理解できる。しかし、それを機械だけで実現するのは無理があるようだ。

 「お腹を引き締める目的で、腹筋運動をするのは悪いことだとは言いません。筋肉強化によって多少の影響はありますから。ただ、男性の場合は、お腹が内臓脂肪によって張り出していることが多い。つまり、体の内容物によってお腹が出ているのです。内臓脂肪を腹筋運動で効率よく減らすことはできません。唯一の方法は食事を低カロリーにし、運動によって消費カロリーを上げることです。その運動の一環として、腹筋運動を取り入れるというのであれば、それは素晴らしいことです」(中野さん)

 お分かりいただけただろうか。筋肉の形がはっきりとした、均整のとれた体型を手に入れたければ、まずは、全身の皮下脂肪を減らすことが肝要。そこから、引き締めたい、あるいは整えたい部位の筋力トレーニングをしていくことが、体型を保つことにも、健康な生活を送るためにも大切なことなのだ。

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。
まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。