体の健康を保ち、いつまでもパワフルに働くには、正しい運動と食事、そして休息のバランスが取れた生活が必要だ。そこで、著名なフィジカルトレーナーである中野ジェームズ修一さんに、遠回りしない、結果の出る健康術を紹介してもらおう。
 今回のテーマは、ストレスが多い社会生活で陥りがちな「抑うつ状態」について。気分が落ち込んだ状態になったとき、効果が期待できるのが運動だという。

気分が落ち込むときこそ運動は効果的だ。(c)Jozef Polc-123RF

 現代は「ストレス社会」と言われることが多い。朝の通勤は満員電車に揺られ、会社に着けば山のような仕事をこなさなければならない。最近は「働き方改革」と称して、時間がくればオフィスから退出させられることも多いが、消化できなかった仕事は自宅で隠れてやることもあるという…。

 そんな休息のないストレスフルな生活によって、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積して、抑うつ状態に陥ってしまう人は、決して少なくない。

「抑うつ状態」はとても身近な症状

 厚生労働省が2002年に岡山と長崎、鹿児島の3都市の20歳以上の住民を対象とした調査によると、「うつ病」の12カ月有病率(過去12カ月間に経験した人の割合)は2.2%、「いずれかの気分障害」が3.1%。また、生涯有病率は、「うつ病」が7.5%で、「いずれかの気分障害」は9.0%と報告されている(*1)。

 「いずれかの気分障害」とは、病気まではいかないが、気分が落ち込み、身体的、思考的に活発に活動できなくなっている状態で、いわゆる「抑うつ」の症状だ。こんな症状の人は、現在ではもっと多くなっているはずだ。

 「抑うつ状態に陥ると、どうしても日常の活動量が低くなってしまいます。すると、肥満や体調不良になり、QOL(生活の質)が悪くなるので、結果、さらに抑うつ状態を助長するという負のスパイラルに陥ってしまうのです」と、フィジカルトレーナーで日本健康心理学会認定の健康心理士でもある中野ジェームズ修一さんは言う。

 「健康心理学会に入ってから、いろいろな講習で学びました。そこで知ったのは、うつ病に罹患した人が投薬を受けるのと、運動やスポーツをすることは同じくらいの改善効果があるということです。また、摂食障害によって体重が30kgを切るくらいになってしまった方が、運動によって改善したという例もあります。そこまで症状が重くない抑うつ状態でも、体を動かすことで十分に改善することができます」(中野さん)

*1 吉川武彦ほか「心の健康に関する疫学調査の実施方法に関する研究」平成15年 総括・分担研究報告書