やや広い歩幅で歩けば活動量アップ

 ここまではウォーキングの速度や時間について説明したが、運動効果を上げるために加えて着目したいのは“歩幅”だ。「歩幅が狭ければ、運動量が少なくなるのは想像できると思います。適正な歩幅は身長の45~50%、と考えればいいでしょう。身長160㎝の人であれば72~80㎝、身長170㎝なら76.5~85㎝です。歩幅が狭い人は、下半身の筋力が弱かったり、筋肉に柔軟性がなかったりするケースが多いです。そういった人は、筋力や柔軟性を上げるための運動も必要になってくるのです」(中野さん)。

 ただ、歩幅が狭いからといって、無理に広くして歩く必要もない。過剰になると、それ自体が故障を発生させる原因になる。できる範囲で広めの歩幅で歩くことが、運度量を増やし、筋力の強化につながる。

 「歩幅を広げて歩いた時のほうが、より多くの筋肉が使われるようになります。東京大学名誉教授の宮下充正先生(*)は、分速50mで普通の歩幅で歩いた時と、分速100mで歩幅を広げて歩いた時に使われる筋肉の違いについて調べています。それによると、太もも前面の大腿四頭筋の一つである外側広筋、裏側にある大腿二頭筋、スネの前脛骨筋、そしてふくらはぎの下腿三頭筋のいずれも活動量が増えています。特に顕著に増えるのが大腿二頭筋です。ここは鍛えるのが難しく落ちやすい筋肉でもあるので、歩幅を広げて速めのスピードで歩くと、維持、強化に役立ちます。」(中野さん)

 誰もが簡単手軽に取り組めるウォーキング。しかし、中野さんが言うように一工夫加えるだけで、より効果的になり筋力アップもできる。漫然と歩くだけでなく、“運動”という意識を持って取り組もうではないか。

* 出典:「ウォーキングブック 科学に基づいたウォーキング指導と実践」(ブックハウス・エイチディ)
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「正しいウォーキングの始め方」(だいわ文庫)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。