運動の疲れを持ち越さないことも大切

 高強度の運動をした後は、多かれ少なかれ、筋線維も小さな損傷を受ける。この細胞の破壊を最小限に食い止め、ケガに発展しないようにするための方法が、前回の記事で紹介したアイシングだ。また、損傷した筋肉を早期に修復するには、たんぱく質をしっかり摂取することも大切だ。こうした体のリカバリーを行うことで、疲れを翌日に持ち越さず、スタミナを高めるための日々のトレーニングを継続できるようになる。

 「青学の長距離選手たちの場合、1日に体重1kgに対して最大で1.8g程度のたんぱく質を取るように言ってきています。体重50kgの選手であれば、90gですね。男性アスリートの場合、持久系トレーニングの後にたんぱく質を多く摂取すると、リカバリー促進に役立つというデータがあります。一般の人であれば体重1kgに対して1gでいいと思います。理想的には、練習後2時間以内に高たんぱく質・低脂質の食事を取るようにすると、リカバリーがスムーズに行われます」(中野さん)。

 たんぱく質を取る時に気をつけなければいけないのが、脂質の取り過ぎだ。「たんぱく質だから」と肉ばかりに頼り過ぎると、調理法にもよるが、どうしても同時に脂質を取ってしまう。肉類だけでなく、魚や豆類、それに卵や乳製品など、動物性と植物性のたんぱく質のバランスを考えて食べるようにすれば、脂質の取り過ぎを防げるという。

 「例えば、日本人の一般的な朝食、焼き魚にご飯と味噌汁、それに納豆や卵など、そして定食屋で食べる昼食などを合わせると、1食でだいたい20gのたんぱく質が含まれていると言われています。ですから、体重60kgの人であれば、サプリなどで補給する必要はありません。ただ、一食がラーメンやパスタなどの麺類になってしまった場合は、夕食で焼き魚にプラスして、肉などを取る必要が出てきます」(中野さん)

 不足するたんぱく質をいかにして補うか。アスリートであれば、管理栄養士などが厳密な栄養素とカロリー計算で導き出す。しかし、我々一般人にとってはなかなか難しい。そこで中野さんは「一般的に、肉にしても魚の切り身にしても、おおよそ手のひらサイズがたんぱく質20gだと言われていますから、それを目安にすればいいでしょう」と言う。

 「ただ、炭水化物だけ、たんぱく質だけを取っていればいいということではないので、なるべく多くの食材からたくさんの栄養素を複合的に摂取するのが、アスリートや一般のスポーツ愛好家にとって大切です」(中野さん)

 三大栄養素はもちろん、ビタミンやミネラル類は、そのどれもが単独で役割を果たすのではなく、互いに影響し、補完し合いながら働くもの。偏った栄養摂取では、健全な体づくりはできない。食べ方の工夫もまた、体づくりのトレーニングになるのだ。

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士
中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん 1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。