ハードな運動後に糖質を取るとスタミナ向上

 人間の体には、ある栄養素が枯渇すると、次にそれが供給された時に溜め込むように働く特性がある。例えば、脂質の摂取を完全に遮断してしまうと、次に入ってきた時に体脂肪として蓄積されやすくなるのだ。「高強度で長時間の運動によって、筋肉中のグリコーゲンが完全に枯渇しても運動を続けていると、体は“ここまで消費してもまだ運動を続ける必要があるのだ”という反応を示します。そして、グリコーゲンを溜め込むタンクのサイズを大きくするように働きます」と中野さんが説明してくれた。

 この現象は一気に起こるものではなく、練習を繰り返すうちに得られる。こうした体の仕組みを活用して、一昔前のランナーやトライアスリートの間では、レース前に完全に糖質を抜いてしまう“オールアウト”という状態を作り出し、数日前から一気に補給する“カーボローディング”という方法が流行した。しかし、この方法は今ではほとんど行われなくなっている。

長距離を走るトップランナーたちは、トレーニング後のエネルギーが枯渇した時点で高糖質の食事を取り続けることによって持久力を高める。(©PaylessImages-123RF)

 「それはリスクが高いからです。糖質を完全に抜いてしまってから急激に補給すると、体重の増加を招きます。標準的な体質の方でも1~2kg増えるのは珍しくありません。すると、特に長距離選手のように体脂肪が少ない人にとっては、足首から膝、腰への負担が多くなり、スピードが損なわれることはもちろん、ケガのリスクも高くなります」(中野さん)

 問題は糖質の取り方にある。箱根駅伝三連覇を達成した青山学院大学の陸上部をはじめとして、最近のトップランナーたちはレース当日に体重を増やすことなく、持久力を向上させられる調整法を取り入れているのだ。

 「現在の調整法では、レース本番に合わせて徐々に炭水化物の量を増やしていきます。選手によって個人差はありますが、だいたい1~2週間かけて行います。すると、少しずつ体重は増えて行きますが、人間の体には恒常性という、元に戻ろうという反応があります。その性質を利用して、レースの日にちょうど体重が戻るように、炭水化物を多めに摂取する期間を調整します」(中野さん)

 この調整法では、トレーニング後のエネルギーが枯渇した時点で高糖質の食事を取り続けることによって、筋肉中により多くのグリコーゲンを溜め込むことができるようになるので、レース当日の持久力の向上につながるのだ。青学陸上部は、この理論を基にコンディショニング作りをしながら、選手の競技能力を向上させていたのだ。

 「一般ランナーの方も、レースに向けて高強度の練習をした時には、できるだけ早く、できれば30分以内に高糖質の食事をしたほうがいいでしょう。2時間後に摂取するよりもグリコーゲン貯蔵レベルが高くなることがよく知られていますから。食事が難しいようであれば、糖質が多めに入っているゼリー状のサプリメントなどを利用しても構いません。練習後には水分や電解質も失われているので、そういった栄養素の補給も大切です」(中野さん)

 こうした運動と食事を習慣づけてスタミナを高めておけば、日々の仕事やスポーツをタフな体で楽しめるようになるだろう。