「豊さと便利さは違う」

 さらにこの工場は、やはり安藤氏の設計によって「循環・ネットワークによる環境づくり」をテーマに掲げた第2期工事(2000年完成)へと発展する。敷地内に風力発電機を置き、ビオトープを設けた。安藤氏の提案で、クリーンエネルギーで工場の水を浄化し、その水をビオトープに流していく仕組みとした。メダカが泳ぐビオトープの水ならば、「安心して自然に戻せる」ことを誰もが体感できる。

第2期工事後の北側全景(写真:車田 保)
長さ180mのビオトープ(写真:車田 保)

 この工場の建設過程でも、岩田社長の胸に刺さった言葉がある。

「豊さと便利さは違う」

 岩田社長は言う。「安藤さんの建築は必ずしも便利というわけではないが、そのなかに豊かさを感じる。例えば、静岡ファクトリーの食堂は下階から階段でアプローチする。この階段の幅が広く、勾配がゆったりとしていて、食堂に向かう期待感を高めてくれる」

 静岡ファクトリーは「安藤忠雄が設計した工場」として知られ、見学者も多い。「私たちの認知度向上に果たした役割は大きい。今では、風車や保育室のある会社、『安藤建築の工場』として地域の人に存在感を認めてもらっている。求人にも効果を発揮している」と岩田社長は話す。