最大筋力の5~6割を使う負荷からスタート
一方、筋トレの負荷は、どれくらいが効率的なのだろうか。
「個人差がありますが、まずは自分の最大筋力を知ることが大切です。全くの初心者であれば、ベンチプレスを例にすると、目安は自分の体重と同じ重さが挙げられるかどうか。それが無理であれば、やっと1回挙げられる重さが、現在のその人の最大筋力になります」(岡田准教授)
最大筋力の30%程度の軽い負荷だと、ほとんど筋肉の遅筋線維(遅い速度で収縮し、小さな力を長時間出せる筋肉)しか使われない。筋肥大率の高い速筋線維(速い速度で収縮し、大きな力を瞬間的に出せる筋肉)を使うには、少なくとも最大筋力の50%以上、理想を言えば65~70%が必要だが、最初は最大筋力の5~6割を使う負荷から始めればいいだろう。
40kgしか挙げられないのであれば、20~24kgだ。もし、今ジムに通っていて、筋肥大を目指すのであれば、トレーナーに相談してみるといい。適切なセット数なども一緒に考えてくれるはずだ。
効率的に「筋肉美」を手に入れる「ピラミッド法」
さらに岡田さんは、より効率的に筋肉美を作るメソッドを教えてくれた。「それは、私がボディビルダーとして行う“ピラミッド法”と呼ばれる方法です。最初は軽いウエイトでトレーニングを始め、セットごとに重量を増やしますが、回数は減らしていきます。そして最大筋力の重量を1回挙げて、残りのセットで重量を減らして回数を増やしていくのです」(岡田准教授)
これは筋肥大と筋力アップ(神経系統の強化)の両方を効果的に狙えるメソッドだ。男子柔道の代表選手たちも、岡田准教授のこの理論をもとに強化トレーニングを積んでいった。続けていくと、今までできなかった重さが挙がるようになるが、これは、今まで使っていなかった筋肉の神経が目覚め、リミッターが外れた状態になるため。それによって、その人が本来持つ筋力を発揮する能力が覚醒する。より高い負荷をかけることにより、最大筋力の60%程度の重さを挙げることを繰り返すトレーニングよりも、筋肥大の効率が良くなるのだ。
ベンチプレスを例にしたピラミッド法の基本設定基準
筋トレの行程 | 最大筋力 | 回数 |
1セット目 | 50% | 10 |
インターバル | 1分 | |
2セット目 | 70% | 7 | インターバル | 1分 |
3セット目 | 90% | 3 |
インターバル | 3分 | |
4セット目 | 100% | 1 |
インターバル | 2分 | 5セット目 | 90% | 限界数 |
インターバル | 2分 | 6セット目 | 70% | 限界数 |
インターバル | 1分 | 7セット目 | 50% | 限界数 |
「実際にやってみると、かなりキツくて追い込む感じになるのが分かると思います。ただ、本気で効率的に“筋肉男”になりたいのであれば、これくらいは必要です。チャレンジしてみてください(笑)。
ただ、これまで筋トレを多少やってきた人でもかなりキツいトレーニングであることは確かだ。完全な初心者は、ここまで無理をする必要はない。自分ができる範囲で重量を調整し、体が少し慣れてきたら、徐々にピラミッド法へと移行していけばいい。
柔道男子日本代表選手たちが実践し、鍛えてきた科学トレーニングの一端。それを参考にして筋量を増やし、引き締まった体を手に入れれば、ビジネスの上で相手に与える信頼感も高まるはず。挑戦してみる価値はあるだろう。
日本体育大学 准教授
