自分で考え検証する“食事トレーニング”を実践

 今、何の栄養を取るべきか、本人たちも理解していた。でも、自分の欲求が勝ってしまい、食べたいものを食べてしまう状況だった。それを少しずつ改善していくところからのスタートだった。

 「選手との距離感も難しいんです。一般の方々は、私が選手にぴったりくっついて指導しているイメージをお持ちかもしれません。しかし、オリンピックや世界選手権には帯同しますが、私自身は試合会場や宿舎には入れません。ですから選手自身が今ここで、どんな栄養素が必要かを判断するしかないんです。それに私があまりガミガミ言うことで、選手が食から離れてしまうことが一番怖かったんです。私だけの力ではなく、総務コーチの岡田先生の食べ方なども選手は参考にしていました。その面では、非常に助かりました」と上村さんは当時を振り返る。

 その点は我々一般人やビジネスパーソンも同じだろう。頭では食べるべき物、食べてはいけない物が分かってはいる。しかし、その時の気分に従って食べてしまうことはよくある。いや、むしろ世界を相手にした試合や体づくりが求められない分、選手たちのようには考えないことのほうが多い。だから、気がついた時には苦しいダイエットが必要な体になってしまうのだ。

 日頃から自分の体に目を向け、健康を考えた食べ方と運動を心がけていれば、後でつらい思いをしたり、病気に悩まされたりすることはなくなる。

 「今自分に足りない栄養が何なのか、その適正な量はどれくらいか。自身で工夫して食べることも訓練です。私はこれを“食事トレーニング”と呼んでいます。できるだけ自分で考えて実践し、結果はどうだったのかを選手たちから報告してもらいます。それから私が、“じゃあ、こうしたらいいよ”“このタイミングで、ビタミンが多いこれを食べてね”とアドバイスする形です。一般の方々に指導する時も、同じスタイルですね」(上村さん)