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あらゆる分野に自由競争を取り入れる

 日本と同様フランスでも、財務省は財政再建を至上命題とします。マクロンはEUが加盟国に定める限度内に財政赤字を切り詰めるため、大幅な歳出削減を発表します。公務員給与の上昇にブレーキをかけ、国防費を削る一方、燃料(軽油)税の増税を決めたのです。

 さらに労働規制の緩和を政令で決められることとし、「労働市場の活性化」を実現しました。要は、企業が労働者を解雇しやすくしたわけです。

 教育では、大学入学資格(バカロレア)を持つ者は好きな大学へ進学できた従来のシステムを改め、日本と同様に大学側が成績で学生を選抜できるシステムを導入しました。当然、人気のある大学は競争が激しくなり、幼少期から受験勉強ができる富裕層の子弟に有利となります。あらゆる分野で自由競争を取り入れ、フランス社会をグローバル化しようとしたのがマクロン改革の本質であり、日本の小泉・竹中改革と同じ方向といえます。

 19世紀のフランスでは、最終的にブルボン朝を打倒した七月革命の結果、銀行家たちが政権を独占。二月革命では、自由主義者から社会主義者までさまざまな人々が党派を超えて結集し、銀行家政権を打倒し、第二共和政を樹立しました。

 羊のようにおとなしい日本人とは違い、「革命」がもはや伝統文化となっているフランス人は黙っていません。5月には、マクロン改革に反対する学生たちがキャンパスを占拠し、11月には燃料税値上げに反対する運輸労働者らが交通安全用の黄色いベストをユニフォーム代わりにして抗議行動を開始。一般市民も参加し、またたく間に拡大したのです。国民戦線を支持する保守派も、左派党の支持者も、「反マクロン」で手を組んでいます。

 ルノー・日産の会長、カルロス・ゴーンの逮捕は、フランスでも大きく報じられました。ルノーの最大株主はフランス政府ですが、2015年にマクロン経済相(当時)はルノー株を買い増して支配権を強めました。これらの動きが日産側を疑心暗鬼にさせ、日本の検察へのリーク、ゴーン逮捕につながったとみる向きもあります。マクロンはブエノスアイレスで開かれたG20で日本の安倍首相に日本政府の介入を求めましたが、「民間の問題に政府は介入しない」と断られています。

 デモ参加者はゴーン逮捕に好意的で、「日本の司法に見習え」の声もあります。

ドイツでもグローバリスト政権が敗北

 このマクロンと二人三脚でグローバル化を推進し、大量のシリア難民を受け入れたドイツのメルケル首相も国民から拒否反応を受けています。ドイツ人は物静かですが、地方選挙では移民制限を掲げる政党AfD(ドイツのための選択肢)がじわじわと躍進し、メルケル与党のCDU(キリスト教民主同盟)は惨敗。メルケルは責任をとって党首を辞任し、首相は続投するもののレームダックになりました。

 このように欧米諸国では、グローバリスト政権の敗北が続いています。

(作成:茂木 誠)

 そして日本では安倍政権が入国管理法を改正し、外国人労働力の受け入れに大きく門戸を開きました。まさに「一周遅れのグローバル化政策」であり、これが何をもたらすかは、欧州諸国を見れば明らかです。安い労働力を確保して企業収益は上がるかもしれませんが、日本人の給与は下がり、結果的に購買力も下がります。これに消費増税が追い打ちをかければ、羊のようにおとなしい日本人も、堪忍袋の緒が切れる時が来るでしょう。自民党自体が「保守回帰」するのか、自民党に代わる「草の根保守」の政党が出現するのか。

 一つの方向に振り子が振れれば、かならず後で反動が起こる。世界史の教訓です。