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仏、各地で大規模反政府デモ(写真:ロイター/アフロ)

 11月半ばにパリで始まった反政府デモは、1カ月を過ぎても沈静化するどころか全土に拡大し、一部が暴徒化しつつあります。大手メディアは、マクロン政権による「燃料税引き上げへの反発」と説明。一部の暴徒が起こすセンセーショナルな行動の映像を流すだけで、事の本質を論じようとはしません。

 今回の運動は一部の暴徒が起こした一時的なものではなく、フランス国民の多数が共感を示している「反マクロン」の運動なのです。これが仮にマクロン退陣に結びついた場合、「シャンゼリゼ革命」とか「12月革命」と呼ばれるようになるかもしれません。

 エマニュエル・マクロンが史上最年少(39歳)でフランス大統領に選ばれた2017年の大統領選挙を思い起こしてみましょう。

欧州の反トランプ主義者としてのマクロン

 前年に「アメリカ・ファースト」を掲げるドナルド・トランプが米大統領に当選し、シリア難民の流入で混乱する欧州各国でも、反欧州連合(EU)と移民規制を掲げるナショナリストの政党が台頭しました。フランスでも移民規制を掲げる国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペンが大統領選に出馬、既成の二大政党(共和党と社会党)を脅かしたのです。

 国民戦線の支持基盤はベルギー国境の北東部と地中海沿岸の南部。いずれも失業率の高い地域で、トランプ政権の支持基盤となった米国のラスト・ベルト(工場が錆びついた地域)とよく似ています。移民の受け入れが、フランス人の賃金を押し下げていたからです。

 財務官僚からロスチャイルド銀行の副社長に抜擢されたマクロンの最大の支持者は、彼の同業者である国際金融資本とEU官僚でした。国境線の撤廃と、ヒト・モノ・カネの自由な移動を求めるグローバリストです。グローバリストの立場を取るマスメディアは、ルペンを「極右」と呼んで徹底的に叩きました。

 社会党から分かれた左翼党のメランションも大統領選において、格差是正を掲げて2割程度の票を獲得しました。米大統領選でヒラリー・クリントンと民主党候補を争ったサンダースの立場です。

 二大政党は決選投票で手を組み、マクロンを統一候補に担いで、ルペン政権の出現を阻止しました。マクロンが高校時代の教師で25歳年上の子持ちの女性を口説いて結婚していたことも女性票の獲得に貢献し、「若くてさわやか。でも何をしたいのかわからない」マクロンが当選したのです。2008年米大統領選でのオバマ当選とよく似ていました。

 オバマは上院議員でしたが、マクロンはオランド政権の経済相を務めた経験だけで、議員経験もないまま大統領になったのです。財界と官僚の意向で動く大統領になることは、最初から予想されていました。