私は慣習なんて全く気にしませんから

SPA(製造小売り)業態はアパレルなどで見られますが、参考にされましたか。

中川:ユニクロがSPAを採用したことがいろんなメディアに出ていましたからイメージはしました。ただ、よくよく考えてみると、日本の和菓子屋ってSPAなんですよね。自分たちで作って自分たちで売る。だから工芸にもできるだろうと。

問屋からの反発は。

中川:当時のうちの商品は、小売り7割、問屋2割、直営1割くらいの割合だったんです。問屋の割合が少なかったですし、利益率も高くないので、将来的に減らしていきたいと考えていました。確かにSPAは慣例を気にしていたら打てない手だったかもしれません。でも、私はそういうの全く気にしないので。

 百貨店に出店したときも、「週に1回は営業担当が挨拶に来い」と言われたんです。それが百貨店の慣例らしくて。でもうちは営業担当なんていない。色々と言われましたが、売り上げが伸びていったら、誰も文句を言わなくなりました。意味のない慣例なんてすぐにやめたほうがいい。

実家の立て直しの経験をもとに、他の工芸メーカーのコンサルティングも事業化しています。なぜですか。

中川:今までビジョンを立てたことがないと話しましたが、実家に戻って初めて長期的なビジョンを立てました。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンです。

 どんどんメーカーが潰れていく危機感と、実家を建て直した経験。うちは麻屋ですが、経験は他でも生かせるだろうと。様々なオファーを頂けるようになって、コンサルティングを始めました。

 最初は全て引き受けていましたが、今は数が厳しいので以下の条件を付けています。一つは工芸に関する企業であること。もう一つは、経営者に変わる覚悟があること。実行してもらわないと意味がありませんから。

工芸メーカーの問題点は様々あると思いますが、最も大きな問題はどこにありますか。

中川:彼らの問題点は「経営していないこと」にあります。予算表がない会社もざら。そのレベルなんです。行政の支援も「モノ作りが大事」というばかりでそこが分かっていない。どのメディアもこの事実をきちんと書かないからミスリードになるのです。

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