フィンテック活用の融資サービスに参入

 そして、新たな領域への侵食として注力しているのが、長年にわたって培ってきた、全国に数多いる顧客企業との関係性を深化させ、ビジネスの拡大につなげようとする動きである。

 リクルートは今年8月、新規事業としてフィンテックを活用した中小企業向け融資事業を開始した。昨夏に設立したリクルートファイナンスパートナーズを通じ、経営支援と合わせて、オンライン完結型の融資を行うというのがその内容だ。

 リクルートファイナンスパートナーズは「Partners」というブランドを通じ、中小企業の経営者向けに「財務・経理」「法務・労務」などのテーマについて経営課題の解決をサポートするほか、設備投資や補助金などに関する業界情報を提供。その上で、運転資金などを融資する。申し込みや審査、入金などはオンラインで完結するため、迅速な融資が可能という。

 このサービスは第一弾として、リクルートの「じゃらんnet」に登録している宿泊施設の運営企業が対象。じゃらんnetに蓄積された商取引のデータなどを分析することで、経営の課題を詳細に分析し、最適なサポートにつなげる狙いがある。当然、その成果によって顧客企業のビジネスが育てば、「果実」はリクルートにももたらされることになる。

リクルートライフスタイルの宮本賢一郎執行役員(右)とリクルートファイナンスパートナーズの小川安英社長(写真:陶山勉)

 リクルートファイナンスパートナーズの小川安英社長は、「ヒト・モノ・カネの全てにわたって取引先を経営支援できるのがリクルートの強み」と強調。じゃらんなど旅行領域を統括するリクルートライフスタイルの宮本賢一郎執行役員も、「競争環境は確かに厳しい。しかし、世の動きに合わせて変化するのではなく、自ら変化を作り出していかなければならない」と語る。

 新規事業の創出を育成を支えるのは、リクルートが近年特に注力してきた、データ解析や応用などのIT(情報技術)の底上げだ。リクルートライフスタイルで、小売店や飲食店を対象にしたPOS(販売時点情報管理)レジサービス「エアレジ」などのデータ分析を担当する植田雄大氏は、「顧客接点とデータの掛け算の中に『勝ち筋』がある」と話す。

 植田氏は今回の連動企画にも登場した、リクルートライフスタイル・ビューティ営業統括部の川島崇氏と、エアレジを活用して居酒屋チェーンの業務や客単価の改善に成果を上げた。顧客企業と太いパイプを持ち信頼を得ていた川島氏と、データに精通した植田氏が組むことで、収益機会を作り出すことにつながった。

 「課題を解決するために、現場が自由に議論をしたり一緒に動くことができるのはリクルートの強み。成功モデルを積み上げていくことで、リクルートはまだまだすごくなれる」と植田氏は強調する。リクルートでは、こうした中小企業の経営支援に付加価値を持たせることで、ビジネスをさらに拡大させていく狙いだ。

 データ分析によるコンサルティングや金融業などは、既存のプレーヤーの競争も激しく、リクルートとはいえすぐに圧倒的なシェアを握れる保証はない。それでも、リクルートの侵食により業界には大きな刺激が与えられ、競争原理が働くことで活性化が図られていく可能性は高い。それは、これまでのリクルートの歴史が証明している。

 峰岸社長は今回のインタビューで、「ゼクシィにしろホットペッパーにしろ、本当のビッグヒットは10年に1本ぐらいしか出ない。それでも、ヒットを生み出す企業文化自体が、そのことによって活性化していく。それこそがリクルートの強みだ」と語った。リクルートが競争力を高め続けていけるかどうかは、その絶え間ないサイクルにかかっている。