日経ビジネス10月16日号の企業研究「リクルートホールディングス 創造への破壊は続く」の連動企画で紹介する3人目のキーマンは、常務執行役員の本原仁志氏である。彼が統括しているのは、「じゃらん」「ゼクシィ」などリクルートホールディングスの“顔”ともいえる華やかな消費者向けサービスではなく、国内外の人材派遣事業だ。

 人材派遣といえば一見地味な印象かもしれないが、リクルートにおいて重要度は高い。国内外合わせた事業の売上高は2017年3月期に前の期比20.1%増の1兆687億円。全社売上高の約6割を占める。さらに、10年以降、海外で矢継ぎ早にM&A(合併・買収)を実施してきた。20年をめどに海外の人材派遣だけで売上高1兆円を目指している。

 本原氏は、長年にわたって人材派遣の業界に携わってきた、この道のプロフェッショナル。「ユニット経営」と呼ばれる経営手法を導入し、業界水準を超える利益率を実現していることでも知られている。本原氏にリクルートにおける人材派遣事業の位置付けやユニット経営の考え方、M&Aが成功し続ける秘訣について聞いた。

リクルートといえば、多くのユニークなサービスのイメージが一般的には強いかと思います。一方で、現在のリクルートにおいては人材派遣事業が中核。グループ内で、人材派遣事業とはどのような位置付けなのでしょうか。

本原仁志氏(以下、本原):リクルートグループというのは情報誌、今ではインターネットを中心に、カスタマーとクライアントをマッチングするというモデルが基本。サービスの利用者も多いですし、圧倒的にそうしたイメージでしょうね。

 ただ、こうした基本的なビジネスのフレームの中で、カスタマーとクライアントをつなぐという意味では人材派遣も同じなんですね。たまたま雇用という軸の中でマッチングしているか、情報誌やネットの消費者向けサービスという軸であるかという違い。加えていうと、この人材派遣というビジネスが、海外展開においても我々のノウハウが有効だったということです。

本原 仁志(もとはら・ひとし)氏
1957年生まれ。百貨店勤務などを経て、83年日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。2003年リクルートスタッフィング社長。09年リクルート取締役兼常務執行役員。12年からリクルートホールディングス常務執行役員(写真:竹井俊晴)

人材派遣というビジネスの特性とは、どのようなところにあるのでしょうか。

本原:まず、「地産地消」的な感じが強い事業ですね。ある土地に、働きたい人とオフィスが存在していて、その間をつなぐというモデルですから、場所に依存するし、場所の特徴に応じて変化する。例えば、私の故郷である山口県柳井市と、東京・大手町においては働く環境が全く違うわけです。

 もう一つは、経済環境に応じて、求人環境と求職者の需給のバランスも変わってくる。さらに、人々がどういう仕事で働きたいかという、求める職種も重要になる。高度なIT(情報技術)エンジニアであれば、求人はいくらでもあるが、供給が足りません。オフィスワークの場合は働きたい人は多くいるが、近年の業務の合理化で仕事自体は減っている。こうした変数があって、場所や労働市場の需給、職種によって異なる。これが派遣事業の基本的な考え方になります。