フラットな組織文化にためには、スタッフ一人ひとりの思いや悩みに向き合うことが大切になるーー。連日の議論を通して廣岡、鈴木はこう確認したうえで、ほかのスタッフも含めてマルチタスクのあり方について議論を重ねた。

これまで以上にマルチタスクを徹底

 「星野リゾートのスタッフは日々の業務を通じて事業に参画する」「だからこそ、議論するスタッフは皆、施設全体について責任を負う」「お互いの業務を知ってることによって建設的な議論ができる」「マルチタスクだからこそ、さまざまな戦略間のフィット感を生む」などを自由に話しながら、スタッフは目線をそろえていた。そのうえで、働き方の見直しを進めた。

 出した結論は「仕事の幅を広げ、これまで以上のマルチタスクに取り組む」こと。星のや京都では18年5月からスタッフを3チームに分けて、4カ月に1回のペースで早番、中番、遅番を順番に担当する方向が見えてきた。

話し合いを重ねた結果、これまで以上にスタッフはマルチタスクを徹底することになった(写真:大亀京助)
話し合いを重ねた結果、これまで以上にスタッフはマルチタスクを徹底することになった(写真:大亀京助)

 一方、導入に否定的な見方もあった。「経験とスキルがあるからこそ、高い顧客満足度を維持できている」と考えるメンバーもいたからだ。これまでの働き方を変えたくない人もいた。何年も遅番だけを担当してきたスタッフは「これまでの働き方、スタイルが自分には合っている」と主張した。

 それでも話し合いを重ねた結果、マルチタスクを徹底するために全スタッフが可能な限りすべての仕事をできるようにすることが決まった。遅番だけを担当してきたスタッフは当初、新たな働き方に踏み込むのにちゅうちょうしていた。それでも実戦してみると大きな問題は生じなかった。試行錯誤する場面もあったが、時間をかけて議論した分、スタッフは新しい働き方に納得感があり、思いのほかスムーズだった。

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