ユニットディレクターの鈴木は入社後、星のや京都に配属(写真:大亀京助)
ユニットディレクターの鈴木は入社後、星のや京都に配属(写真:大亀京助)

 一方、ユニットディレクターの鈴木は大学で美学・美術史を学んだ後、13年に星野リゾートに入社。星のや京都に配属となった。

 星のや京都は当時から業績自体は右肩上がり。顧客満足度調査においても、設定した目標を達成していた。このため表面上、問題がないようにみえた。しかし、内側ではスタッフの働き方についての課題が見え隠れし、スタッフにはどこか閉塞感が漂っていた。

 廣岡と鈴木がそれぞれのマネジメント職に就く少し前、調理がメーンのスタッフが退職。スタッフは本来マルチタスクだが、詳しく調べると辞めたスタッフに特定の単純作業が集中していた。

フラットになりきれていなかった

 なぜ、そんなことになったのか。星のや京都では、作業内容ごとに目標時間を細かく設定している。スキルを高めるのが本来の目的だが、いつの間にか「スキルを習得しないとモノが言えない」「議論するとき、知識や経験が大きい人ほど声が大きくなる」雰囲気が生まれていた。そんななかで一部のスタッフは働き方がマルチタスクから遠ざかっていた。

 廣岡は振り返る。

 「自由に発言する状態でなかった。フラットになりきれていなかった」

 背景には新たな船待合をつくるプロジェクトが一年半がかりで進行し、チームビルディングにあまり力を入れられなかった事情もあったが、廣岡、鈴木は「目線が合っているようで合っていなかった」と受け止めた。2人は数人のリーダークラスのスタッフとともに、星野リゾートのミッションやビジョンなどを確認することから始めた。

 話すうちに鈴木らが痛感したのがリーダーの役割だ。振り返れば、それまではリーダーがオペレーションを回して顧客満足度の向上を目指すことで手一杯になっていた。このため、スタッフは気づきやアイデアがあっても、気軽に言える状態でなかった。

星のや京都は内側でスタッフの働き方について課題を抱えていた(写真:大亀京助)
星のや京都は内側でスタッフの働き方について課題を抱えていた(写真:大亀京助)

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