「組織がおかしくなる元凶に自分がなってしまう」

星のや京都の船を操るのは星野リゾートのスタッフ(写真:大亀京助)
星のや京都の船を操るのは星野リゾートのスタッフ(写真:大亀京助)

 周囲はそんな野口の姿を心配するようになった。

 ユニットディレクターを務めていた廣岡太郎らが「もっと仕事の幅を広げてほしい」とアドバイスしたことが、野口が考えを改めるきっかけになった。

 当時の野口は、船の業務に力を注ぐなかで周囲との距離が気になり、どこか孤立感を感じることもあった。それだけに廣岡らの心遣いが身に染みた。

「このままでは組織がおかしくなる元凶に自分がなってしまう」

 ではどうすべきか。野口は、マルチタスクに対して、皆としっかり取り組むべきだととらえた。「入社以来ずっと取り組んできた働き方に帰れば、周囲に伝えられることがある。チームに貢献ができるのではないかと思えた」と野口は振り返る。マルチタスクのさまざまな現場に積極的に入り、再び全業務に集中して取り組むようになった。

フォルクローレ音楽と総支配人

廣岡は星のや京都の総支配人を務める(写真:大亀京助)
廣岡は星のや京都の総支配人を務める(写真:大亀京助)

 野口にアドバイスを送った一人である廣岡は17年12月、星のや京都の総支配人に就任。同じタイミングでユニットディレクターに鈴木麻里江が就いた。2人を中心に星のや京都ではスタッフの働き方を見つめ直す取り組みが始まった。

 廣岡は大学院の修士課程で南米の地域研究を専攻。現地のフォルクローレ音楽にはまり、ボリビアに研究と音楽家としての修業を兼ねて滞在したこともある。星野リゾートには07年に入社。創業地である軽井沢のホテルブレストンコートやアルツ磐梯などを経て10年、星のや京都に異動した。

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