鮒ずしを使ったメニュー
鮒ずしを使ったメニュー

 鮒ずしを使ったメニューに対し、「すごくおいしい」という人がいた。しかしその一方、「やはり無理」という人もいた。「おいしい」と「無理」はほぼ半々ずつだった。

 ここからメニューは顧客の声を集めながら、チーズやワインのジュレの量を変えるなど改良が続いた。その一環として、いろいろな店のさまざまな鮒ずしを取り寄せ、皆で食べながらメニューに合った一品を探した。

 やがて創業400年の老舗鮒ずし店との出会いが転機になった。琵琶湖特産の鮒を限られたエリアからだけ水揚げする漁師から仕入れ、伝統の中で培った手法で仕上げていた。熟成には3年をかけていて、この鮒ずしを使うことで食べやすさが大きく上がった。

 そのほかにも細かな工夫を加えることによって、鮒ずしを使ったメニューは最近ではほとんどの人が完食するようになった。唐澤は「エッジの効いた試みだったが、折れずにやってきてよかった」と振り返る。

 星野はその後、この老舗鮒ずし店を自ら訪問。味や香りの魅力を確かめると同時に、店主との会話はいつしか代々続いてきた事業のあり方にも及んだ。

土産コーナーも滋賀産でそろえる

 鮒ずし以外にもワインやほうじ茶、チーズなど滋賀産の発酵食品を、1年半ほどかけて次々にメニューに導入。近江ほうじ茶の発酵利き茶体験やチーズ作り体験、ワインのテイスティング体験なども始めた。その結果、食事を目当てに宿泊する女性客が増加していった。

 同時にじっくり時間をかけながら、延暦寺の協力を得た「やくよけ参拝」や日吉大社の強力により「やくばらい参拝」など、この地ならではのオリジナルプログラムを開発。土産品コーナーからは京都の商品をなくし、滋賀中から「これは」と思う品を集めた。琵琶湖がよく見える場所にはテラスを整備した。

 一連の取り組みによって、ロテルド比叡の客室稼働率は7割ほどと前経営時とほぼ同じまま、1万2000円ほどだった客単価が約2万6000円と倍以上に上昇。売上高も前体制を上回るところまで来た。前体制からのスタッフが星野リゾートの働き方に慣れたことも重なり、顧客満足度も高まった。ここまでの日々を振り返り、唐澤は「京都を捨てる決断が大きかった」と話す。

土産コーナーも滋賀の商品をそろえる(写真:大亀京助)
土産コーナーも滋賀の商品をそろえる(写真:大亀京助)

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