星野代表は「鮒ずしを紹介しないまま、この地での観光は成り立たない」とした(写真:栗原克己)
星野代表は「鮒ずしを紹介しないまま、この地での観光は成り立たない」とした(写真:栗原克己)

 このため「フランス料理のレストランで鮒ずしを出していいのか」と懸念するスタッフがいた。これに対し、星野は「むしろ鮒ずしをうまく調理することが大事」と話した。また鮒ずしについて「好きな人は好きだが、そうでない人もいる。本当に鮒ずしでいくのか」という声もあったが、「地域ならではの食材であり、鮒ずしを紹介しないまま、この地での観光は成り立たない」という声も出た。さまざまな議論を経て、最終的には滋賀に徹する以上、「フランス料理に鮒ずしを組みこもう。皆驚くから施設を知ってもらうきっかけにもなるし、絶対にやろう」ということでまとまった。

「お客様に出す自信がない」

滋賀についてのさまざまな本も置かれている(写真:大亀京助)
滋賀についてのさまざまな本も置かれている(写真:大亀京助)

 大きな方向が固まると、星野はそこから先を現場に任せる。会議が終わり、唐澤がレストランの担当者に話すと「本当ですか」と驚いた。しかし、滋賀に徹するコンセプトを説明すると比較的すぐ理解してはくれた。それでも担当者は「お客様に出す自信がない」と静かに話した。

 試行錯誤を経て、フレッシュチーズとワインのジュレ、そして鮒ずしを3層に合わせた一品が完成。香りをいくぶん和らげながらうまみを押し出すメニューに仕上がった。

 唐澤はいけると思ったが、周囲の不安もあり立ち止まって考えた。目指す方向は間違っていない。それでもこれだけエッジのきいた料理を出す以上、全員がすんなり食べるとは限らない。もし、この料理を前に「無理だ」と言われた場合や食べてみて「きつい」と言われた場合にどうしたらいいかーー。唐澤が出した結論は、「すぐに別の料理を出すこと」。チャレンジが受け入れられない場合も想定したうえで、この一皿をコースに組み込むことを決めた。

 メニューの提供が始まると、客の反応は大きく分かれた。

次ページ 土産コーナーも滋賀産でそろえる