スタイリッシュな施設が女性客らに人気(写真:大亀京助)
スタイリッシュな施設が女性客らに人気(写真:大亀京助)

 顧客分析によると、ロテルド比叡の顧客にはリピーターとなっている人たちもそれなりにはいた。しかし、それ以上に目立ったのは、京都市の中心部などの宿泊施設がいっぱいになった結果、仕方なく押し出されるようにやって来たケースだ。客室の稼働パターンなどから確かにそのことが読み取れた。

 京都から流れてきた人は、比叡山中にあるからロテルド比叡を訪問するといった「ポジティブな理由」から来たのでなかった。あくまでも、京都に宿が取れない、という「ネガティブな理由」によって宿泊していた。

 このまま「あふれたから来ている人」を頼みにしているようでは、集客が安定しない。顧客の満足度を高めるのも当然、難しい。「この施設を目的に来る人を増やす必要がある」と唐澤は考えた。

総支配人の打ち出した戦略に星野は……

 ではどうするか。代表の星野も出席して施設の方向性を決める取り組みが始まった。

 唐澤はこのとき、せっかく京都と滋賀の境周辺の比叡山に位置しているのだから、両方の魅力を同時に知ってもらうべきだと考えた。そうすれば、両方楽しめるに違いないと思った。そこで星野を前に会議の場で「京都のいいところ、滋賀のいいところを組み合わせたら施設の魅力になる」とプレゼンテーションした。境付近にある地の利を生かしているし、プレゼンにはそれなりの自信があった。

 しかし、これに対して星野の反応はクールだった。
「全然面白くない」

客室数は29室とこぢんまりとしている(写真:大亀京助)
客室数は29室とこぢんまりとしている(写真:大亀京助)

 星野によると京都と滋賀の両輪でいこうとしても、前の経営時の宿泊部門と結局同じことになる、という。

 なぜか。そもそも京都と滋賀を並べるといっても、京都の集客力は滋賀に比べると圧倒的に多い。観光庁がまとめた2017年の宿泊旅行統計調査によると、延べ宿泊者数は京都府の1892万人対し滋賀県は465万人と4分の1にとどまる。

 このため両方の魅力を提案しようとしても、結局は京都からの集客に頼ることになり、これまでと何ら変わりがないという。その言葉には説得力があり、会議は行き詰まりそうになった。

 打開するため、唐澤は「市場調査」として、事前に滋賀各地を回った話を始めた。そんななかで琵琶湖に近い余呉湖を訪れた話をした。余呉湖周辺は京都の有名観光地に比べると訪問する人は少ない。それでも唐澤は余呉湖に行き、近くで鮒ずしを食べていた。その鮒ずしがおいしかった話をすると、星野は「こちらの方が全然、面白い」と乗ってきた。

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