日経ビジネスは10月29日号で特集「星野リゾート 世界への成功方程式 すべては人手不足から始まった」を掲載。関連記事を日経ビジネスオンラインで随時、公開する。

 星野リゾートでは、社員の働き方やサービスのあり方などをめぐってさまざまな「事件」が起こる。星野佳路代表は「事件のなかにこそ、課題を解決するヒントがある」と前向きな姿勢で臨む(以下敬称略)。

ロテルド比叡は星野リゾートが2015年から運営する(写真:大亀京助)

 比叡山は京都と滋賀の境付近に位置している。最澄が平安時代に開き、世界文化遺産の延暦寺があることで知られる。

 星野リゾートが運営する「ロテルド比叡」(京都市)は、比叡山ドライブウェイ沿いの琵琶湖を望む地に建つ。客室数は29室。当初は別の会社が運営していたが、星野リゾートは15年から運営を受託している。

 以前の運営ではブライダル事業、外来客も対象のフランス料理レストラン、そしてホテルの宿泊などを手がけていた。しかし、規模に比べて事業分野が多い分手が回らず、収益性は低かった。

 このため、運営を受託した星野リゾートは宿泊中心に切り替えることを決定。ブライダル事業をやめたほか、レストランは宿泊者専用に切り替えて施設の新たな魅力として位置づけることになった。

小規模なうえに温泉がない施設

 総支配人の唐澤武彦は星野リゾートに入社して約20年になる。唐澤は創業地である軽井沢の勤務が長い。同社は総支配人などのマネジャー職に立候補を取り入れているが、唐澤はその2回目に立候補。軽井沢の日帰り施設などの総支配人になった。その後、「界熱海」(静岡県熱海市)の総支配人を経てロテルド比叡に来た。

 新しい勤務先は施設が小規模なうえに温泉がない。また、施設の特徴から「星のや」「界」「リゾナーレ」などの同社のサブブランドを名乗らないままの運営になる。15年の運営開始にあたり、「この条件下で、どう集客を確保し収益を上げるかがポイント。滞在の魅力を作っていく必要がある」と覚悟した。

 赴任して早々、唐澤がロテルド比叡の顧客の属性を分析したところ、驚いたことがあった。それは「京都の町中から流れてくる人」の多さだ。

ロテルド比叡の唐澤総支配人(写真:大亀京助)