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 例えば、宿泊客からレストランでの食事について「食べられない食材を変更できるか」「予約の時間をこう変えてほしい」などを尋ねられたとき、スタッフは判断しないままその都度、可能かどうかを日本からの総支配人らに尋ねていた。実際には現地スタッフはさまざまな判断ができるし、どうしたらいいかもわかっていることが多いのだが、「許可を得たというお墨つきがなければ、あとで責任を問われる」と、なかなか動かなかった。

 それでも、日本からのスタッフは、星野流の働き方を知ってもらうため、指示を出さないことを心がけた。「どうするのか」を命じるのでなく、「どう思うのか」と尋ねて考えてもらうことを優先。答えに何らか修正すべき点があったときに、アドバイスを送ることにした。

 一方、マルチタスクについて、入社前に星野リゾートは働き方の違いを説明していた。他のホテルとの違いに戸惑うスタッフもいたが、粘り強く星野流の働き方を伝え続けた。

 やがて、現地スタッフのなかから意識を変えていっしょに考える人が出始めた。「こういう問題ある」「私も感じてました」「じゃあ、どう解決しようか」と議論できるようになると、ほかのスタッフも考えるように促してくれた。繰り返すうちに「このスタッフに任せれば大丈夫」という感覚が生まれ、スタッフも成功体験のなかで自信を深めた。

マルチタスクの強みを発揮する

 その結果、例えば宿泊客がレストランの予約変更を希望した場合、スタッフの考えで「テーブルが空いているかどうかを確認」。そのうえで「スタッフの人数などから実際にオペレーションができるか」を確認するようになった。

 独自の働き方はバリにおいて運営面の強みを生んでいる。

 星のやバリのスタッフはマルチタスクで働いている分、スタッフ数が競合の半分ほどにとどまるという。バリで火山が噴火して一時観光客の足が遠のいたとき、競合はスタッフの人員整理を進めたが、星のやバリではリストラなしで乗り切ることができた。

バリでも星野リゾートはフラットな組織とマルチタスクを徹底する