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仕事以外の生きがいを持つことが元気でいられる秘訣

 よく言われることですが、1本の矢は折れやすいじゃないですか。でも、3本くらいあると、仕事がうまくいかなくても音楽があるし、音楽がパッとしない、冴えないなと思っても運動があるし、とどこか拠り所が作れるんです。そんな風にバランスを持っていると、結構、生産性も上がるのかなと思っています。

 演奏するのは、ビートルズがお約束ですね。それにエリック・クラプトン、ボブ・ディランにビーチ・ボーイズ、サイモン&ガーファンクルなどなど、我々世代にあったものです(笑)。ライブはだいたい2時間半くらいで、24~27曲やります。確かにそれだけ演奏すれば、前回お話ししたように腕の張りも強くなりますよね。

 演ったことがある方なら分かると思いますが、リハーサルを何回かやって、それから本番、結構、体力が必要なんです。最近メンバーの中では、「指を使うからアルツハイマー対策に良いじゃないか」なんていう冗談が飛んでいますよ。メディアプロデューサーとその親友は僕より2歳年上ですけど、もう一人は同じ歳です。年を数えてみたら、4人の合計年齢264歳のバンドなんです、すごいですよね。ビートルズの「When I'm Sixty Four」という曲があるじゃないですか、それを全員で歌うんですよ、笑っちゃうでしょ。みんな64になるとは思わなかったけど、はるかに越しちゃったよね、って(笑)。

 音楽といえば、話題になったクイーンのフレディ・マーキュリーの半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』も観ましたよ、僕も好きでしたから。彼らも本当に才能のあるグループでしたから。それに劇中で描かれている「ライブ・エイド」はちょうど僕がアメリカにいたころでした。本当にいい映画でしたね。映画を観て思ったのは、フレディのクリエーター・パフォーマーとしての才能もすごいけど、バンド、そして曲を一つにまとめあげていったのは、ギターのブライアン・メイだったという根拠なき確信がつかめましたね。

 ブライアン・メイは2007年にインペリアル・カレッジ・ロンドンで天文物理学の博士号を取っているんですよ。やっぱりやっていることが一つだけじゃないでしょ。ちょっと一緒にするのはおこがましいですが、仕事だけでなく何かほかのこと、趣味や生き甲斐を持つということが、いつまでも元気でいられる秘訣だと思いますね。

(まとめ:松尾直俊=フィットネスライター/インタビュー写真:村田わかな)

[ 日経Gooday 2018年12月28日付の記事を転載]

米倉誠一郎(よねくら せいいちろう)さん
法政大学教授
米倉誠一郎(よねくら せいいちろう)さん 1953年東京生まれ。一橋大学社会学部、経済学部卒業。同大学大学院社会学研究修士課程修了。一橋大学商学部附属産業経営研究施設助手に着任後、ハーバード大学大学院に留学。同大学歴史博士号取得(Ph.D)。1995年に一橋大学商学部産業経営研究所教授着任。97年より同大学イノベーション研究センター教授。2012~14年はプレトリア大学GIBS日本研究センター所長を兼務。そのほか、一橋大学イノベーション研究センター特任教授や法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授、アカデミーヒルズ日本元気塾塾長など、数々の役職を兼務中。イノベーションを核とした企業の経営戦略と史的研究を専門として、関連する著作も多数。近著に『イノベーターたちの日本史 近代日本の創造的対応』(東洋経済新報社)、ミネルヴァ日本評伝選『松下幸之助 きみならできる、必ずできる』(ミネルヴァ書房)などがある。