ワンウェブの人工衛星の150kgは、従来の基準で言えばきわめて小型の通信衛星だが、目下のISTの目標の100kgよりも重い。投入軌道も1200kmと“高めの低軌道”だ。しかし、いずれ人工衛星が軽くなるか、ISTの打ち上げ能力が増強されれば、ターゲットになる。

 一方、数kgから100kgのマイクロサテライト、ナノサテライトでは、すでにサービスインしているスタートアップ企業がある。

 たとえば米サンフランシスコのプラネット社(旧プラネット・ラボ)は、重量4kg程度の光学衛星Doveをすでに150機近く低軌道に投入しており、地球の全表面を1日1回撮影して更新するサービスを展開する。超小型人工衛星の業界ではリーダー格だ。

 一方、この連載の1回目に紹介したオーストラリアのSASは、わずか3.1kgで独自の推進系まで備えた通信衛星「3Diamonds」を投入し、ブロードバンドではなくナローバンドのネット環境を安価に提供することを目指している。すで3機が試験的に軌道に乗っており、来年にはさらに数十機を投入してサービスインしたいという。

 ぼくはSAS社のCEOメイア・モーラム(Meir Moalem)と話した時に、ISTが開発するロケットのスペックや打ち上げ拠点などを伝えて意見を聞いてみた。

 「サービス開始はいつなんだい? 2020年? それでは遅い。我々は2018年にたくさんの人工衛星を上げたいんだ」
 「じゃあ、故障した衛星のリプレイスのための打ち上げは?」
 「我々の衛星は赤道近くの上空を周回する軌道を取る。日本からの打ち上げだと、軌道角の変更にエネルギーがとられて効率が悪くなる。それでも、結局、コスト次第だ。1kgにつき1万ドル程度なら、ゲームチェンジャーになれるよ」

 ちなみに、1kgあたり1万ドルくらいというのは、ローコストをうたうスモールランチャーのいずこも、いまだ実現できないほどの価格破壊的なものだ。何トンものペイロードを打ち上げられる大型ロケットなら相対的に単位重量あたりの価格が低くなって、この価格(ざっくり1kgで100万円)は実現できるのだが、そもそも超小型人工衛星の特別なニーズのために小型ロケットを使う発想なので、比較の対象ではない。

市場は確実に存在する。世界は待っている

 しかし、とはいっても、彼らにしてみても、「期限までに新しい超小型人工衛星を上げなければならないのに、キャリア(打ち上げる手段)がない」というような状況はこれからいくらだって出てくるだろう。その時にどの打ち上げサービスが理にかなったプランを提供できるか、だ。

 まあ、ぼくはISTのセールスパーソンではないので、このあたりで深掘りするのをやめておいた。でも、その後、ISTの金井さんが、メイアと話しているのも目撃したから、きっと相互理解も深まっただろうと想像する。

 さて、今回は、ISTの金井竜一朗さんのプレゼンの内容や、直接伺ったお話に寄り添いつつ、世界のニュースペースの中でホットの超小型人工衛星とスモールランチャーをめぐる話をまとめてみた。

 月面基地や火星植民と比べたらスケールが小さな話かもしれないが、ここには確実に堅い市場を持つ産業が育まれつつある。それは、もう誰の目にも明らかな水準にまで来ていた。

 そして、ISTが相手にするのが「世界」だ、ということもよく分かった。

 そもそも、宇宙を相手にしている会社が、ビジネスを日本国内に限るというのはちょっとありえないことではある。

 しかし、そんな中、金井さんがあえて「日本国内」に目を向ける発言をしたのが印象的だったので、記しておく。