マスク氏は、ここで何度も両手をズボンのポケットに突っ込み、ちょっと肩をすくめたような姿勢で話した。どことなく、いたずらをしたけれどおすまし顔をしている子どものようだ。

 なにしろここはこのプレゼンの本題の部分である。人類が、「マルチ・プラネット・スピーシー」になる一歩は火星から!

火星計画。

 マスク氏は、具体的な計画のタイムラインを示した。
 まず2022年。

 2機の貨物船(BFRの宇宙船がそのまま貨物船になる)を火星に着陸させる。水の存在を確認して、かつ、周辺の危険物の分布なども確認。電源、掘削機械、生命維持インフラを将来のために設置。

 そのために2018年(来年だ!)からBFRの建造を始め、5年後のミッションに備える。「5年間は自分には長い時間だが、できる」。ここで、大きな拍手。

 さらに、2024年。

 今度は4機の宇宙船を送る。貨物2機と、クルーを乗せたものを2機。火星に立つ初めての人類だ。

 火星に到着したら、すぐに推進剤製造プラントをセットアップ。太陽電池アレイや、水源の確保も。そして、将来拡張できる基地を作る。

 基地とはいっても、最初は宇宙船のまわりに設備がちょぼちょぼとあるだけだ。

 しかし、すぐに増設される。やがて与圧した設備がたくさん置かれはじめ、都市の体裁を整えていく。その様子がイメージ図でスクリーンに示される。【大拍手】

 やがて、火星をテラフォーミングして、地球と同じような青い惑星にする。とても素敵な場所になる。

 マスク氏がそのように語った時が、会場の熱狂の最高潮。
 You can do it! Elon!
 どこかから声が飛び、ひゅーひゅーと口笛が響き、万雷の拍手。まるでロックスターだった。

Something else! とマスク氏が切り出した

 以上が、マスク氏が示した現時点での火星計画。
 今年は、「だれがどのように」支払うのかという点を解決するべく、火星にも月にも行ける探査ロケットを、そのままスペースX社の基幹的なビジネスで使うものとして統合していくことで、「儲けながら火星を目指す」ということだ。

 ぼくはそのあたりの損得勘定は分からないが、マスク氏としての目算があるからこそ語っている。

 ただし、地球でも火星でも使える巨大な往還機兼宇宙船というのは、技術的にとてつもないチャレンジであることは、想像に難くない。ましてや有人飛行を想定しているわけで、安全性の要求も格段に上がる。ハードルは高いよなあと思いつつ、場の支配的な空気は、“You can do it! Elon!”だった。

 さて、以上のプレゼンテーションには、ちょっとだけ続きがあった。
 Something else! とマスク氏が切り出した。

 このあたり、アップル社のスティーブ・ジョブズ氏がかつて新製品発表の際によくやっていた“One more thing”を思わせた。ちょっと後に、スクリーンにMacOSX Sierraの壁紙が映し出されるハプニングがあって、なんだかニヤリとしてしまったが、これはどうでもいい余談だ。

 「火星に行ける船があるなら、地球で使えばどうなるだろう」とマスク氏は問うた。
 火星にいけるくらいの「バカみたいな噴射のロケット」を地球で使うとは?

 このために用意されたCG動画が映し出された。