「僕が宇宙へ出たい理由」

スポーツ報道でよく使われるCanonの大砲レンズがぞろぞろ……

 さて、壇上に登場したマスク氏の印象は、「静か」だった。
 ボディランゲージも大げさではないし、言葉もぼそっとしている。

イーロン・マスク氏

 これまで彼のインタビューを読んだり、YouTube動画などを見たことなら何度もあるわけだが、それは「書き起こし」や、時に編集された動画であって、生で見るのとは印象が違う。生身の人間から、これから何が語られるのか知らない状態で聞くのははじめてだった。

 まずは自然とマスク氏の佇まいや話し方に注目し、傾聴した。
 そして、すぐに引き込まれた。

 「簡潔に、告白をしておきたい。なぜこれが大事なのか」とマスク氏は言った。

 「未来というのは、基本的にとてつもなくエキサイティングで興味深いもののはずだ。あなた方は、いろんな物事に刺激を受けたいはずだ。朝起きたときに未来はすごいと思いたいはずだ。それが宇宙を探査することについてのすべてなんだ。星々の間に飛び出すことよりエキサイティングなことを私は思いつけない。それが、理由だ」

 ぼそぼそした、ぱっとしない口調で、しばしば、口ごもりながら語ったこの「告白」にしびれた人は多いのではないのだろうか。

 ニュースペース全盛のIACはビジネスの話が中心になることが多かったけれど、そのトップランナーは逆にこんな素朴な思いを吐露するような、そして、一見、シャイにも見える人物だった。実に味わい深い。ぼくはマスク氏の人物像に積極的な関心を持ったことはなかったが、にわかに共感を感じざるを得なかった。

生イーロンを前に、招待されたVIPたちもスマホで動画を撮りまくる。

 ここに至るまで、時間にしてわずか90秒。
 「告白」を済ませたマスク氏は、すぐに本題へと入った。

火星計画の具体的な進捗を示す

 去年、メキシコで行われたIAC2016でも最終日にプレゼンをしているため、今回は1年間の進捗、アップデートを語るという形式だ。

 「去年、いろいろ話したが、問題があった。つまり、これを誰が、どうやって支払うかという問題だ。キックスターターでなんとかなる? いや、きょうはちゃんと考えてきた」

 といったふうな前振りで、彼の火星計画を実現する方向性を示すというのが、今回の目標だった。

 火星計画を実現するためには、まずリソースを集中する。今は、ファルコン9やらファルコン・ヘヴィやら、ドラコン宇宙船やらドラゴン2宇宙船など、さまざまな方面に分散しているものをひとつにまとめる。それは、マスク氏がBFR(Big F****** Rocket。良い名前を検討中)と呼んできた超大型ロケットで、1段目も2段目も再利用可能な仕様。直径9メートル、高さ106メートル。2段目は、全長48メートルの宇宙往還機でもある。

 これは惑星間ミッションにもそのまま使う設計で、地球・月間、地球・火星間を渡る有人飛行の際には、現在、就航中で最大の旅客機エアバスA380よりも大きな居住空間を実現できる。その時の船室は、40室を想定している。

計画のキモになる「BFR」。

 ちなみに、BFRの打ち上げ重量は、4400トンで、離昇時の推力は5400トンだ。ざっと計算すると、初期の加速度は、0.23Gくらい。ものすごい噴射をしながらゆっくりと上っていくのは壮観だろう。だからぼくは、BFRのことを頭のなかで「バカみたいな(B)噴射の(F)ロケット(R)」と呼ぶことにした。もちろん、「ブリリアントでファンシーなロケット」でも、「ビッグ・ファーザー・ロケット」でもなんでもいい。