(前回はこちら→「日本のロケットベンチャー、国際会議に見参!」)
アデレードで開催されたIAC(International Astronautical Congress、国際宇宙会議)2017にて、閉会前日の9月28日の夜7時すぎ、運営側からすべての参加者に対して一斉メールが送られた。
親愛なるDelegateの皆様(注・IACの参加者は、各組織の「代表」Delegateと捉えられている)
わたしたちは、みなさまの多くが14時からのイーロン・マスクの話を聞きたいのではないかと予想します。そこで、参加者のみなさまのホールへのアクセスを管理するために、以下のような方法を採ります。
・北アトリウムとスカイウェイ通路のドアは朝9時から閉鎖。普段ここから出入りしている人は注意してください。
・11時15分からは、南アトリウムも閉鎖。13時10分にふたたび開放され、ここがホールへの唯一の入り口となります。
・13時よりも前に、列を作ることは禁止です。
・ホールが満員になった場合も、参加者はロビーに設置した大スクリーンなどでその様子を見ることが出来ます。また、スペースX社のライヴストリームで視聴することも可能です。
ちょっと異例のお達しだった。
最終日の一番最後の「出し物」として予定されていたスペースX社、イーロン・マスク氏のプレゼンテーションで想定される混乱を避けるために、運営側は入り口を限定して、人の流れを制御する方法に出た。
同じ大ホールを使った集まりとしては、開幕セレモニーや、各国宇宙機関の長が集まってのパネルディスカッションなどがあったが、いずれも時間になったら三々五々席に向かえばよいもので、このような厳重な規制はなかった。
「イーロン・マスク・オンステージだ!」
さて、当日。
午前中の諸々のセッションが終わると、IACの参加者たちはそわそわしはじめた。
列を作るのは禁止だが、そのへんにたむろするのは構わないだろうとばかりに、ざっくり場所取りする人たちも現れた。そして、13時をすぎると、すみやかに列ができた。

何人くらいいるだろう。コンベンションセンターの屋外にいったん出てから並ぶことになるのだが、横列に10人くらいが並んだ状態で200メートルくらいは続いている。アイドルの握手会でもあるまいに(いや、昨今、これだけの人数を動員できるアイドルは少なかろう)、一癖も二癖もある宇宙業界の剛の者たちが、目を輝かせて粛々と入場開始を待つ姿は、ある意味、象徴的にも思えた。
いまやIACでは、国家が主導する宇宙機関よりも、一民間企業、それも伝統的な航空宇宙産業ではなく、21世紀になってから勃興したニュースペースの申し子がより多くの人たちを惹き付ける。
ぼくもなんとか席を確保し、周囲で「イーロン・マスク・オンステージだ!」とわくわくしている人たちの間で、自然と期待感が高まってきたのだっだ。

なにしろタイトルは“Become a multiplanet species”で、つまり「(人類は)複数の惑星に住む種になる」だ。火星移住計画を推進するマスク氏だから、かねてから示しているヴィジョンをさらに具体的にして発表するのだろう。
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