その際に、「心を一つに」する手段として「宇宙」が使えるというのが、UAE上層部の判断だった。探査機の名前のアル・アマルは、英語ではHOPEと訳されて、あちこちにその名が書かれていた。これを日本語にすると、「希望」、もしくは、「のぞみ」。日本の火星探査機も意味としてはHOPEだった(また、日本の宇宙往還実験機もHOPEで、ISSの日本モジュールも、英訳すればHOPEである)ことを知っているのかと思ったが、たぶん意識していないのだろう。

 「わたしは、それまでディフェンス(国防)を担当する部署にいたので、宇宙機関を立ち上げた後、いろいろカルチャーショックを受けました」とシェイカさんは言い出した。

「日本のJAXAはとても親切」

 「ディフェンスは機密が多いし、よその国のことを知ることはインテリジェンスの仕事ですよね。でも、宇宙はオープン。わたしたちは、日本ともアメリカとも欧州ともやりとりがあるし、ロシア、中国とも話をしています。基本的に、みんなわたしたちを助けてくれるんですよ。特に日本とU.K.は親切。日本のJAXAに何かを相談したらわざわざこっちまで何人も来てくれて教えてくれたり、学生を日本で受け入れて実習させてくれたり……」

 日本が親切だというのは、国際協力を是とするIACの展示会場で聞くにふさわしい話だ。もちろん、日本側にしてみれば、UAEが計画していた地球観測衛星「ハリーファサット」(三菱重工が受注。2018年打ち上げ)が関係していたかもしれないし、火星探査機アル・アマル(同。2020年打ち上げ)にも、その時点で同様の目論見を持っていたかもしれない。いずれにしても、UAEの火星探査機を種子島から打ち上げられるのは、やはりいい話であるような気がする。

 なお、UAE宇宙機関は今年になって、100年後に火星に都市を建設する“Mars 2117”計画を発表した。

 最後に、宇宙機関としては、最も新しいメンバーであるニュージーランド。

 IAC開催の初日にオーストラリアが宇宙機関設立をアナウンスしたので、その時点で最新参者ではなくなったわけだが、展示場にブースを持っている国家の宇宙機関としてはやはり最も新しいものだった。

 「うちの宇宙機関は去年できたばかりで、それも、きっかけはニュースペース」と、担当者ははっきり述べた。

 ニュースペースのスタートアップ企業がニュージーランドに宇宙港を開設し、打ち上げビジネスを展開しようとしている。それをきっかけに、宇宙関連法が策定され、ニュージーランド宇宙機関ができた。

 そのスタートアップ企業は、「ロケットラボ」という。150kgまでのペイロードを地上500キロメートルの太陽同期軌道に届ける能力を持っており、小型人工衛星(ミニサテライト、マイクロサテライト、ナノサテライト)の需要を当て込んでいる。最初の商業フライトはまだだが、その「一歩前」まで来ているという認識をニュージーランド宇宙機関も示していた。

 小さな人工衛星。

 それを小回りよく運ぶ、小さな輸送手段。そのニーズは確実にあって、初回でも少し述べたように、今回のIACではかなり話題になっていた。

 合わせて、これは日本の企業も関わっていることだと注意喚起しておきたい。

 北海道大樹町で、小型の宇宙輸送システム(要するに宇宙ロケット)を開発しているインターステラテクノロジズが参画しようとしているのは、まさにこの市場なのである。

 次回、詳しく述べる。