そして、IACで興味深いのは、あの手この手で、宇宙開発・宇宙探査のコミュニティ感を盛り上げようとすることだ。

 もともと、東西冷戦の時代にも宇宙開発関係者が直接対話ができるようにしたいという願いから開催されるようになった、という話もあるくらいで、とにかく参加者の一体感を重視する。それは、この会議に関心を持って聞きに来た地元市民から希望者をつのって登壇させて、各宇宙機関トップに質問してもらうというコーナーにも現れている。個人的にはとても好印象だった。

うちの子がSTEM系の教育を受けられるようなんとかしろとカナダの長官に迫るおばちゃん

 「中国の宇宙ステーションは、国際宇宙ステーションと一緒にやらないのですか」と素朴な質問に対して、CNSA総書記長も「それはよいアイデアだ」と述べるなど、あくまで友好スタンスなのだった。

 さて、こういった大人数を動員するイベント的なものが進行する中で、技術者、科学者、その他研究者たちに専門的な議論も同時にスタートしていた。

 学会としてのIACの中心である「テクニカル・プログラム」だ。事前にリストアップされたテーマだけで、180を超えるタイトルがある。それぞれ2時間の枠の中で6つの発表が標準なので、5日間で1000を超える発表が行われたことになる。

 また、別立てでGNF(グローバル・ネットワーク・フォーラム)という企画も常時いくつも走っており、そちらはややビジネス寄り。しかし、この世界では技術とビジネスが、寄り添い合って進んでいるので、そのあたりはシームレスだ。参加者としては、とにかく自分が関心があるテーマのセッションを見つけては聞きに行くしかない。これについては別の回で紹介したい。

超小型コンステレーション衛星のCEOにインタビュー

 一方、国際展示会的な部分としては、50を超える企業、宇宙機関、研究機関、大学、宇宙関連団体などが様々な規模の展示を出していた。

 伝統的な大企業としては、たとえば、ボーイングとロッキード・マーティン。

 ボーイングは、商業宇宙飛行士を国際宇宙ステーションISSに運ぶ宇宙船、スターライナーのモックアップや、新型宇宙服を展示。話を聞こうにも、テレビの中継や映像メディアの取材が相次いで近づけないほどの人気だった。

 一方、ロッキード・マーティンは、有人火星計画を前に押し出した。「マーズベースキャンプ(Mars Base Camp)」と名付けた火星の衛星軌道上の基地から有人の着陸機を火星に下ろすもので、着陸機がふたたび軌道上のベースキャンプに戻るための燃料として、火星にある水から水素を作って使う。

 「ベースキャンプの一部になるのは、NASAが開発中のオライオン(オリオン)宇宙船です。もちろん、オライオンの開発を請け負っているのはうちです」と広報担当者はにこやかに解説してくれた。このコンセプトが実際の有人火星探査に採用されれば、オライオン宇宙船の用途を増やすことにもつながるわけだ。

 一方で、「ニュースペース」側、スタートアップ企業の参加も多い。今回、注目されていたものを一つ紹介するなら、西オーストラリアの州都パースに籍を置く、SASという人工衛星コンステレーションの会社だ。

 「3.1kgだって! なんて軽いんだ。おまけに、推進装置までついている!」

 「光学系が必要ない通信衛星は、どんどんコンパクトになっていくね!」

 などと興奮気味に話している人たちがいて、ぼくはSASにたどり着いた。

 コンステレーションというのは、そのまま訳せば「星座」だが、この場合、多くの人工衛星を軌道に乗せて、同時に運用することで、機能を果たすように設計されたものを指す。よく知られているものとしては、GPSも人工衛星の数は少ないもののコンステレーションの一例だ。現状ではもっと小さな人工衛星を何百という規模で打ち上げて運用する通信ネットワークや、地球観測網などが計画されていたり、実際に運用中であったりする。

 その中で、SASが異彩を放っているのは、特に小さく、軽いこと。

これが超小型コンステレーション衛星…ではない。実物をイメージしたUSBメモリー。