3つの共催団体はいずれも学術的な色合いが濃く、学会誌もある。会議のテクニカル・セッションの中で発表された内容は、学術論文として後に出版されるものもあるし、少なくともIACのアーカイブに登録される。このアーカイブは会員は無料で閲覧でき、外からでもアブストラクトは確認できる。

 だから学会のイメージで出席すると、開会セレモニーで意表をつかれることになる。

 それは、まさにエンタテインメントだった。本当に文字通りの意味で。

満員のセレモニー会場

 セレモニーは会場となったアデレード・コンベンションセンターでも最大の2000人級ホールに、びっしりと人を集め、1時間半にわたって繰り広げられた。

アボリジニが火をおこしているところ。
オーケストラによる「ジュピター」の演奏が。
そして、ミュージカル!?

 アボリジニ(オーストラリア原住民)が、宇宙をどのように見ていたか、伝統管楽器のディジュリドゥの演奏を交えながら示し、アデレード市内に住む女の子が庭先で踊っていると、そのまま宇宙に飛び出してボイジャー探査機を追い越し、宇宙の深淵を覗き見る(そして帰ってくる)お芝居。さらには、地元オーケストラによるホルストの「ジュピター」の演奏を経て、地元ヴォーカリストの歌と、ミュージカル風のダンスで締める。

 その間、要所要所で、宇宙をめぐる「本題」に戻ってくる。

 人類初の人工衛星であるスプートニクから今年でちょうど60周年だという注意喚起があり、ホスト国であるオーストラリアがはじめて人工衛星を打ち上げてから50周年であることにも言及された(自国領土から自前の人工衛星を打ち上げた3番目の国だという)。

 オーストラリアが、これまでなかった国の宇宙機関をついに設立するというアナウンスがあった時には、大きな拍手がわき起こった。お隣のニュージーランドが前年(2016年)、宇宙機関を設立し、関連法の整備もしたことが大きな刺激になり、また、IACのホスト国になったこともきっかけになった。もともとアデレードのある南オーストラリアは、面積的に世界最大の宇宙基地ともいえるウーメラ地域がある場所だ。日本のJAXAともゆかりが深い。「はやぶさ」のカプセルが地球に帰還したのがウーメラの砂漠だといえば思い出す人も多いだろう。

 宇宙機関を持つということは、世界の国々の「宇宙クラブ」の正式メンバーになるような意味合いもあり、オーストラリアは温かく迎え入れられた。

宇宙機関のトップが一堂に

 セレモニーが終わり、いったん雰囲気が落ちついたかと思いきや、午後一番に、開会に優るとも劣らないセッションが続いた。

 イベント性が高い「各宇宙機関の長」のパネルで、NASA(米国)、CNSA(中国)、ROSOSMOS(ロシア)、ISRO(インド)、JAXA(日本)、ESA(欧州)、CSA(カナダ)の7つの宇宙機関のトップが、それぞれの方針を語った。JAXAからは、奥村直樹理事長が登壇しており、せんだって作成されたばかりの「宇宙ビジョン2030」について解説した。

スピーチする奥村直樹JAXA理事長。

 印象的だったのは、開会セレモニーに匹敵する人数がこのセッションにも出席し、各国宇宙機関トップの発言に耳を傾けたことだ。

 時間も限られているし総花的な議論になるのだが、これだけの国の方針を横並びで聞く機会はなかなかない。今後の世界の宇宙政策の展開を読み取る意味でも聞き逃せないと思う人が多いらしい。

 たとえば、中国のCNSAティアン・ユーロン(Tian Yulong)総書記長の口から何が飛び出すか、ぼくがプレスルームで隣に座った現地ジャーナリストは気にしていた。ぼくも注意深く聞いたのだが、独自の宇宙ステーションの打ち上げと運用、月探査、小惑星探査、火星探査などを、それぞれ独自性を強調しながら確認していく様は、中国がすでに日本など及びもつかない宇宙大国になっていることをあらためて印象づけた。10年ほど前なら、「中国の宇宙技術は未成熟ながら、発展途上国の打ち上げ需要に食い込んでいる」とする見解が一般的だったと思う。しかし、もうそんな時代ではない。

中国は「全部やります」と言っている。