「マイクロサテライト、ナノサテライトの衛星コンステレーションって、結局、打ち上げに苦労するよね。軽いから楽だろうってのは間違いで、バランスのよいキャリアがない」

 と話しているのは、たぶんニュースペース系の起業家か。

 「月面レースの進捗状態っていったいどうなってる? 期限は、今年いっぱいのはずだよね?」という人が言及しているのは、"Google Lunar XPRIZE"のことだ。名前の通り、Googleがスポンサードしており、月面に探査機を送ったチームか賞金を得る。日本からは、民間団体のHAKUTOがエントリー、たしか年末にインドのロケットで月に向かうはずだ。

 「イーロン・マスクが最終日に講演するらしいけど、チケットとか必要?」

 今からそわそわしているのは、たぶん学生。若い連中でつるんでいる。スペースX社のCEOは、彼らのヒーローだ。

 「わたし、ソジャーナ世代(こちら)なんですよ。惑星探査の教育的な意義はとてつもなく大きくて──」というアメリカのSTEM教育関係者とはすごく話が合った(STEMについては、こちら)。

 キュリオシティが近づいてくるたびに目を細めている彼女に、そんなにローバーが好きなのかと聞いたら、あれは、魂の「刻印」みたいなものだったと教えてくれた。

 ソジャーナは、1997年に火星に到着した探査ローバーで、キュリオシティから見ると2世代前に当たる。当時のアメリカの小中学生の盛り上がりはものすごいものがあって、ぼくはたまたまその時期ニューヨークに住んでいたので、宇宙探査が子どもに与える影響を目の当たりにした。まさにその時の「子ども」が大人になって、STEM教育に宇宙を!と言っているのは感慨深い。

 さらに──

隣も向こうも話題は宇宙、宇宙、宇宙…

 「来週、スプートニクの打ち上げ60周年だって知ってた?」

 「オーストラリアの宇宙機関って今までなかったの? 今更だけど、できるならよかったね」

 「宇宙法って、基本的には規制法にならざるをえないんですよ。日本の現行法では、サブオービタル(準軌道)飛行についてはスルーされていて、将来的には考えなきゃならない」

 「国連が宇宙を語るのって意外ですか? 宇宙での国際協力ってまさに国連が関わることですよね」

 「ドバイまで訪ねてきてくれるなら、宇宙センターをご案内しますよ。日本の人たちには助けてもらっているし、お見せできるものは色々ありますから」

 等々。様々な立場の様々な国の人たちとの様々な会話の断片。

 パーティ中の2時間で、思い出せるのはだいたいこれくらいだ。かなり長時間、宇宙アナリストと話し込み、中国の宇宙開発についての謎めいた部分のレクチャーを受けていたので、それほど社交的に立ち回る余裕がなかった。

 それでも、頭は様々なベクトルの「宇宙」にまつわる話で満たされた。

 ぼくは、たまたま何度か宇宙ロケットの開発をテーマにした小説を書いたことがあるだけの、この方面については底が浅い物書きだが、だからこそ、この奇跡のような空間があることに新鮮な驚きを覚える。あまりにも様々な分野の人が、「宇宙」というキーワードだけでつながってここにおり、自分もその巨大なうねりに飲み込まれていく気分だ。メディアとしての参加だからちょっと距離を取るべきかと思っていたものの、初日から早くもそんな気持ちは維持できそうにない。オーストラリア・ワインの力も借りて、すでにぼくは「宇宙酔い」だ。

 酔っ払ったままの勢いで、1日目の開会セレモニーから、5日目の最終日、ニュースペースの寵児、イーロン・マスク(スペースX社)が盛大な花火を打ち上げて掉尾を飾るまでの見聞を、4回に分けてお伝えする。

 これを読んだ人に、ぼくの「宇宙酔い」が伝染するとよいなあ、と思っている。

会場のコンベンションセンター

 まずは開会セレモニーについて。

 IAC国際宇宙会議は、一応、学会の体裁を取っている。