新市場はGDPの2.7パーセント

 経済協力開発機構(OECD)が2009年に発表した「2030年に向けてのバイオエコノミー:政策課題の設定」とする報告書は、2030年のバイオエコノミーの規模として、加盟国の全国内総生産(GDP)の2.7パーセントに達すると予想していた。日本でGDPの2.7パーセントというと、2015年のデータでは1兆4000億円を上回り、食品産業や化学産業のシェアを上回る規模になる。

 こうした期待から欧米各国は振興策を打ち出している。2012年2月に欧州委員会(EC)は「バイオエコノミー戦略」を公表し、再生可能な生物由来の資源への転換を宣言した。同年4月に当時の米オバマ政権も「National Bioeconomy Blueprint」を発表。2016年には米エネルギー省と米農務省(USDA)が、10億トンのバイオマスを用いて2030年に化石由来燃料の25%を代替することを目指す「Billion Ton Bioeconomy」の構想を打ち出した。

 さらには英国、デンマーク、フィンランド、ドイツ、オランダなどに続き、2016年にはスペインやイタリアも、国ごとのバイオエコノミー戦略を策定している。

 日本政府も2017年6月、日本版バイオエコノミー戦略を策定する方針を打ち出した。閣議決定した成長戦略「未来投資戦略2017」の中に「バイオ・マテリアル革命」として、「生物を活用した機能性物質生産のための産学官による技術開発を推進する」「本年度中を目途に我が国のバイオ産業の新たな市場形成を目指した戦略を策定し、制度整備も含めた総合的な施策を推進する」と明記した。

 バイオマスやバイオテクノロジーといった生物による物質生産は、化石燃料を頼りにしてきた従来の技術を再生する役割も担っている。

 自動車や飛行機、電話、電灯など19世紀末から20世紀初頭にかけて人類社会を劇変させた数多くの技術革新が生じたが、プラスチックもこの時期に誕生している。

 樹木が分泌する樹脂は古くから利用されていたが、1909年に米化学者のベークランドがフェノール樹脂「ベークライト」を植物以外の原料を用いて合成することに成功。その後、様々な物性を持つプラスチックが石油を原料に開発、生産され、木材や木綿、麻、絹などの天然素材に置き換わりながら、生活の中に入り込んでいった。

 自動車や飛行機の燃料、電話や電灯を動かす電気、プラスチック素材、これらは石油をはじめとする化石資源を大量に消費し、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの増加をもたらした。人類が地球上に存続していくためには化石資源の消費削減が喫緊の課題となっている。生物による物質生産は有力な打開策である。

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