位置情報の精度が高い点も同システムの特徴だ。利用者の現在地を示す情報の誤差は約30センチメートルに収まるという。照明から可視光通信で送られた情報を使って位置を把握するだけでなく、GPS(全地球測位システム)やスマートフォンが内蔵する歩数計などの機能も組み合わせた。

 従来のGPSだけを利用した位置案内では平面上の誤差が1~5メートルと大きい。また、積層している建物ではどの階にいるのか判別できなかった。このシステムは照明器具と一体となっており、専用器具の設置や電池交換といった作業を省ける。

 屋内の位置情報を利用者に知らせるには、ビーコン(無線標識)を施設内に設置する方式もある。ビーコンを増やせば測位精度を高められる半面、設置や電池交換などの手間が増す。ビーコンを使った取り組みとしては2017年2月、清水建設と日本IBM、三井不動産が共同で、スマートフォンを使って、施設の来訪者に音声で施設内を道案内するシステムの実証を公開で実施した。

 対象エリアは、東京・日本橋室町地区のコレド室町一~三、東京メトロ銀座線三越前駅の地下歩道の一部、江戸桜通り地下歩道で、合計2万1000平方メートル。来訪者が音声でスマートフォンに、受けたいサービスの内容を伝えると、人工知能「ワトソン」の機能を利用して来訪者の希望に添う場所を選定、音声や画面で場所の候補を伝える。来訪者が場所を決め、その旨を音声で伝えると、目的の場所への案内が始まる。

 来訪者の位置は、施設内に5~10メートル間隔で設置したビーコンで確認する。清水建設らは2020年までに、空港施設などでのシステム実装を目指す。

働き方を変えるビル、就職希望者が倍増

 オフィス空間の工夫によって機能向上を図るだけでなく、仕事の生産性を高めたり、従業員の満足度を高めたりする。オフィスを通じて組織再生や組織活性化を後押しする。こうした取り組みへの関心が世界で高まっている。欧州で最高レベルの環境性能を具現化したオフィスビル「ジ・エッジ」は、そんなニーズをくみ取った「働き方を変えるビル」でもある。

「ジ・エッジ」の外観。北西から見る(写真:Dirk Verwoerd)
「ジ・エッジ」の外観。北西から見る(写真:Dirk Verwoerd)

 2015年に運用を開始したオランダ・アムステルダムに立つ地下2階・地上15階建てのジ・エッジには、世界を股に掛ける会計事務所デロイトがテナントとして入っている。ジ・エッジは、同国に拠点を置く不動産会社OVGリアルエステートが発注し、英国の建築設計事務所PLPアーキテクチュアが設計した。

 ジ・エッジでは現在、約3100人が働く。これに対して、従業員が使える机は1000人分しかない。代わりに、ラウンジチェアやコーヒーバーといった場所を散りばめた。採光のためにコの字形にして幅を抑えた執務空間や、各階から見通せるアトリウムを介して、人と人が自然に出会う機会を創出しようとしている。

 建物を利用しやすくするキーテクノロジーはITだ。従業員が固定で使う執務空間は置かない。従業員はスマートフォンから空きスペースや仕事仲間を探し出せる。スマートフォンには従業員ごとに好みの温熱環境といった情報を記録でき、従業員がその都度選んだ場所の温熱環境などを、記録を参照しながら調整する。照明パネルとスマートフォンを連携させ、正確な位置情報を得られる。

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