バクテリアがコンクリートのひび割れを自動修復

 CLTのような木質材料が注目される一方で、バイオ技術を取り入れた革新的なコンクリート材料が海外で生まれている。オランダのデルフト工科大学のヘンドリック・ヨンカース准教授が開発した技術で、コンクリートの中にバシラス属のバクテリアを入れておき、ひび割れを自動的に修復させる生物利用型の自己治癒コンクリートだ。

 コンクリートにひび割れが発生した際に、水や酸素の供給を受けたバクテリアが、周囲に仕込んでおいた栄養素である乳酸カルシウムを使って活動を始め、その活動の結果として炭酸カルシウムを生成。これでひび割れを埋め、コンクリートを「再生」させる。

 「強度の回復までは性能を保証していないものの、ひび割れを埋めて水の浸入を抑えるという機能は回復できる」とヨンカース准教授は説明する。バクテリアは水の供給を受けるまで休眠状態になっている。コンクリート中の強いアルカリ性の状態においても、死滅しないバクテリアを使用しているからだ。

 自然界でバクテリアが炭酸カルシウムを生成して岩などを固結させる作用を応用した。コンクリートをつくる際の混和材のほか、既存のコンクリートのひび割れを補修するモルタルや液体の補修材もすでに製品化している。

 日本では2017年に會澤高圧コンクリートがこの技術の独占販売契約を締結。国内での活用が広がろうとしている。コンクリートのひび割れを抑制したり、早期に補修したりしてコンクリートの耐久性を高めようという動きが日本国内でも活発になってきている。

 土木構造物などの社会インフラの再生や長寿命化を図って将来の維持管理コストを抑制していこうという機運が高まっているからだ。近年、大量のインフラの老朽化は社会問題となっている。

 こうした状況下で、生物の機能を使った自己治癒コンクリート材は、日本国内でも大きな市場を獲得する可能性を秘めている。

LED照明との通信で屋内での人の動きを把握

 建物自体を構築する領域だけでなく、建物の機能性を高める領域でも海外発の技術が存在感を示している。オランダのフィリップスは「可視光通信」と呼ぶ新しい技術を取り入れて、施設利用者の位置情報を把握、利用者に提供するシステムを実用化した。海外の施設に導入してきたシステムを日本でも展開する準備を進めている。

 フィリップスが開発した位置把握システムは、LED照明と共に使う。LED照明から、見た目では分からない程度の点滅光を出し、施設内にいる利用者はスマートフォンなど携帯端末のカメラ機能を用いて、この光を感知する。

 点滅光を発している2カ所の照明器具の位置関係などを基に利用者の位置を特定し、スマートフォンに事前に入れておく館内地図に位置を表示する。

 この位置情報システムは、海外のスーパーマーケットで実用化が始まっている。フランスのカルフール・リール店のほか、アラブ首長国連邦のドバイのアスワークで採用された。館内の利用者に商品を表示したり、買いたい商品がある売場まで道案内をしたりできる。

 「スーパーマーケットだけでなく交通機関や倉庫・生産施設といった物品の運搬を伴う施設などにも活用できる」と、フィリップスライティングジャパンの牧野孔治シニアディレクターは展望を語る。

 照明設備の導入コストは、位置情報を持たせない通常のLEDに比べて少し高い水準に設定する方針だ。さらにフィリップス側で、照明位置情報の管理やスマートフォン用アプリの提供といった運用サービスについて、一店舗当たり年間百万円を切る金額で引き受ける考えを持つ。

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