新生銀行グループもビッグデータ分析に基づく融資の新手法を探っている。ユニークなのは、商品申し込み時の顔写真や筆跡画像の活用を探っていることだ。例えば丁寧なサインをする人はローンをきっちりと返すのか、それとも関係ないのか、こうしたことを探っていく。

 中小企業向け融資においてもビッグデータ分析の利用が進む。銀行で借りられなかった小規模事業者を融資対象にできれば、企業融資の市場は大きく広がると見込まれている。

 オリックスとグループ会社の弥生などは2017年10月、会計ビッグデータによる与信モデルを活用した融資事業を始める。同事業のために新会社ALT(アルト、東京都千代田区)を設立した。

 ALTの池田威一郎ALT事業部シニアマネジャーは「5年後に利用者5万人、数百億円規模の融資を狙う」と目標を掲げる。活用するデータは弥生の会計ソフトで日々記録される取引の仕訳データである。このデータを、与信を判断するモデルに当てはめ、貸し出し可能な金額や金利を個別に判断する。与信モデルはオリックスの与信ノウハウに基づき、AI関連の開発を手がけるベンチャー企業「d.a.t.」(東京都千代田区)と共に作り上げた。

 ALTは貸金業者として登録して融資を手掛け、融資先の取引データを集め、与信モデルを磨いていく。将来は与信モデルの外部提供によるライセンス収入も期待しており、千葉銀行、福岡銀行、山口フィナンシャルグループ、横浜銀行と業務提携契約を結んだ。

 すでに米国ではビッグデータによる中小企業向けの融資市場が拡大している。スマートフォン・タブレット用カード決済アプリを提供する米スクエアは、取引データに基づき企業が資金を前借りできる「Squareキャピタル」を提供。2017年1~3月に4万件超の利用があり、融資金額は前年同期比64%増の2億5100万ドルに達した。

 

 ビッグデータ融資については、住信SBIネット銀行など金融機関、マネーフォワード(東京都港区)やFreee(東京都品川区)などクラウド会計ソフトの提供企業、アマゾン・キャピタル・サービスや楽天カードなどネット通販関連企業などが参入済み。与信枠を決めるためのデータが蓄積されることで、2018年以降は一層の市場拡大が期待されている。

取引市場で個人や企業のデータを売買する

 ビッグデータとその分析が新たな価値を生むようになった今、新たなデータを社外から入手しようという機運が高まっている。そうした期待に応えるように、個人と企業、企業と企業がデータを取引する市場が生まれようとしている。

 データを売買する参加者同士がマッチングして取引できる、データ取引市場をベンチャー企業が設立したり、大手企業がデータの販売に乗り出したりする動きがある。個人と企業の間のデータ取引の一例がエブリセンスジャパン(東京都港区)のスマートフォンアプリ「Every Post」である。

 このアプリをダウンロードした個人は、売ってもよいセンサーデータを設定する。例えば、位置、加速度、方位、歩数、気温、気圧などが挙げられる。登録した個人に対し、データを買いたい企業などから、「レシピ」と呼ぶ条件を記述したオーダーが送られてくる。

3カ月の位置データで500円

 例えば「(スマートフォン通じて)位置データを10分間に一度提供するとともに、生年月日や性別などを公開する。X回のデータ提供でYポイントを付与する」といったものがレシピとなる。

 レシピを見た個人が承認すると、スマートフォンのセンサーによる位置データを売ることができる。

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