図 補助人工心臓の仕組み
左室に装着するタイプがほとんど。左室心尖部に脱血管を、上行大動脈に送血管をつなげて補助する。図はポンプを体内に埋設する植え込み型補助人工心臓。体外設置型では、ポンプは体外に装着する。

 植え込み型にはいくつかの種類があるが、ポンプ内の回転子が回り、連続して血流を送り出す「非拍動式」がメインになりつつある。以前はポンプに一度血液をためてから拍動流を作って押し出す、心臓を模した「拍動式」が採用されていた。

 さらに最近開発された「デュラハート」(テルモ)や「ハートメイト3」(ソラテック)といった製品は、ポンプ内の回転子を磁気で浮かせて回す「磁気浮上方式」を採用している。接触軸受けなどの接触部がないため、ポンプ内血栓ができにくく、長期の耐久性が期待できるという。

 植え込み型の場合、補助人工心臓を入れた後、退院して自宅での療養が可能になる。従来の補助人工心臓は駆動装置やポンプを体外につなげる体外設置型が主流だった。体外型は入院して心臓移植をするまでの短期間使用する前提で開発されたため、一度着ければ心臓の機能が自己回復しない限り、退院はできなかった。

高額なデバイスの費用対効果が問われる時代に

 以上見てきたように、「止まらない心臓」を支えるさまざまな技術と治療方法が開発され、導入されつつある。ただし、紹介した技術と方法はいずれも高価である。当然ながら、そうした高価な医療が医療費を押し上げる影響は無視できない。費用対効果をどう考えるか、議論が必要だろう。

 例えば、植え込み型補助人工心臓は材料価格だけで1000万円を優に超える。国内には、虚血性心筋症で重症心不全に陥り、薬物治療やバイパス手術などで手を尽くした高齢者が多い。そうした百歳の人に補助人工心臓を植え込めば、その寿命を百十歳に延ばすことは技術的には可能だ。だが、補助人工心臓による長期在宅治療の保険適用が認められるとしても、高齢者に無制限に使えば医療費の増加につながる。

 カテーテル治療装置の価格もどれも高額だ。例えば、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)に使われるデバイスの保険償還価格は443万円で、入院費などを合わせた総医療費は約600万円になる。外科手術による大動脈弁置換術での治療にかかる総医療費300万~400万円と単純比較すると、約2倍の医療費が必要になる。

 TAVIの医療費の高さについては、既に診療報酬を議論する中央社会保険医療協議会(中医協)の場でも取り上げられている。2018年の診療報酬改定から薬価の再算定ルールに組み込まれる予定の「費用対効果評価」の対象品目の一つにTAVIの製品の一つが挙がっている。中医協の費用対効果評価専門部会で議論される見込みだ。

■変更履歴
経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)に使われるデバイスの保険償還価格は「465万円」としていましたが、保険点数の変更で現在は「443万円」です。本文は訂正済みです。[2017/10/30 13:00]
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