個々の患者の大動脈弁輪の形状に合わせて、生体弁は均一な拡張力で弁輪に圧着するようになっている。そのため、生体弁には内側からバルーンで膨らませるバルーン拡張型と、形状記憶合金を用いた自己拡張型フレーム技術が使われている。弁周囲で血液の逆流を防止する仕組みもある。

 2013年にTAVIは日本でも保険適用となり、約3年間で5000以上の大動脈弁不全患者がTAVIによる治療を受けた。TAVIを実施できる施設は3年前に国内で8施設しかなかったが、現在は100以上に増えた。2016年には、エドワーズライフサイエンス、日本メドトロニックの2社からそれぞれ最新のデバイスが発売され、使用できる患者の幅も広がっている。

 TAVIはまず、外科手術が実施できない患者を中心に実施された。大動脈弁の治療では通常、実績のある外科手術が優先されるが、開胸して数十分間心臓を停止させる必要があり、合併する基礎疾患などの影響で実施できない患者が3~5割ほど存在する。その多くは高齢者だ。外科手術を行えない患者には対症療法しか選択肢がなく、数カ月から数年以内に死亡するケースが大半だった。

 TAVIにおける30日後死亡率は2%以下。一方、外科手術における30日後死亡率は、単弁置換で2%、再開胸手術で7%となっている。「TAVIを実施した患者群は比較的高リスクな患者を多く含むため、2パーセント以下という率は良好とみることができる」と専門家は説明する。

僧帽弁の閉鎖不全をクリップ

図 カテーテル弁治療の仕組み
下腿静脈からカテーテルを挿入し、右心系から心房中隔を経て左心房、左心室へ動かし、僧房弁の前尖と後尖の両端をクリップで留め、僧房弁逆流を低下させる。(J Am Coll Cardiol.2011;57:529-37.などを基に作成)(写真提供:アボットジャパン)

 左心房と左心室の間にある「僧帽弁」に対してもデバイスが開発され、欧州ではカテーテル弁治療が可能になっており、国内でも治験が進んでいる。

 僧帽弁が傷んで機能不全に陥った場合に、弁の前尖と後尖の一部をクリップで留めるというものだ。「MitraClip(ミトラクリップ)」 と呼ばれるデバイスを、米国のアボット社が開発し、2008年に欧州で実用化した。主に重症僧帽弁閉鎖不全症に対して現在30カ国以上でMitraClip を使った治療が行われている。日本国内では現在、承認に向けて治験中である。

 

 カテーテル弁治療の最大の利点は、心臓を動かしたままで弁の修復ができることだ。MitraClip によるカテーテル治療では、下腿静脈からカテーテルを挿入し、右心系から心房中隔を経て左心房、左心室へ動かし、僧帽弁の前尖と後尖の一部をクリップで留め、僧帽弁逆流を低下させる。