・ 勝率の高い台を見つけるためには、ムダ打ちになることを承知で、ある程度いろんな台を試してみる必要がある。
・ しかし所持金は限られているので、ある程度「勝てる台」の見当がついたら、残った軍資金はそこに集中的に賭けたほうがいい。

 ……これが最適なギャンブル戦略(パチンコ必勝法)だ。

マーケティングの秘訣はパチスロから学べ!(写真=PIXTA)
マーケティングの秘訣はパチスロから学べ!(写真=PIXTA)

「パチスロ必勝法」にもとづく自動的な価格設定

 さて、パチンコやスロットにまつわる高尚な数学的問題はさておき、現実の価格設定に話を戻すと、ちょうど、

  • 一番もうかる価格帯を見つけるには、ある程度いろんな値段を試してみる必要がある。
  • しかし、決算までに十分な利益をあげないとクビになってしまう。儲かりそうな価格帯の見当がついたら、あとはずっとその価格設定でいくべきだ。

 という風に応用できる。ということは、

  • 「どの値段を試すか」
  • 「どのくらいの期間試すか」
  • 「いつごろ『実験重視』をやめて『利益重視』にシフトするか」

 といった「実験」+「営業」のプロセス全体についても、「数学的に正しいやり方」が存在することになる。さらに、「文脈付きバンディット」と呼ばれる発展版の枠組みになると、需要を左右する(価格以外の)重要ファクター、たとえば広告や顧客の特性なども、その場その場の「文脈」として「パチスロ必勝法」に織り込むことができる(そして、価格設定だけでなく、たとえば広告の打ち方なんかも同じように自動化できる)。

 ここまでくれば、「データ収集+データ分析+意思決定」のサイクル全体を最適なやり方で回せるように、プログラム(値付けAI)として設計することが可能だ。

「値付けAI」vs「値付けAI」

 さて、「値付けAI」を使えば、ベストな値付けを低コストで(というか自動的に)やってくれるので、その導入は一種のプロセス(工程)・イノベーションと見なすことができる。こうしたイノベーション競争において誰が勝者になるのか、はたまた本当に全企業が値付けAIを使う必要があるのかは、それ自体が興味深い話題だが、今回はとりあえず棚上げにする(興味のある方は、拙著『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』の2章~4章あたりを参考に、ご自分の業界について考えてみて頂きたい)。

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