……というわけで、AIが労働の需給にもたらすインパクトは、「消える職業」と「生まれる職業」、そして「人口減少スピード」の三つ巴のバランス次第ということだ。

私たちが本当に考えるべきこと

 もちろん、たとえばエレベーターの「運転」と「管理」は別の職種であり、タスク構成も必要なスキルも異なる。だから、エレベーターガールが「エレベーター自動運転プログラムを設計する仕事」に、いきなり転職できるとは限らない。もう少し一般論として考えても、

  • 「無くなる仕事」と「新たな仕事」は、別物だ。
  • また自動化で「人余りになる仕事」と、人口減少で「人手不足になる仕事」にも、ズレがあるだろう。

 となると、もし私たちが「AI失業」と「人口減少」について真面目に考えるのであれば、社会全体として重視すべきなのは、

  1. 仕事と人手の出会いを、業界・社会全体でスムーズにする工夫。
  2. いまある人手でこなせるように、仕事のカタチを柔軟に変化させる工夫。
  3. 「新たな仕事」に柔軟に対応できるような、新スキル習得の場所と機会。
  4. 「人手不足の分野を狙って自動化を進める」ような、研究開発と企業活動。
次回は、AIの「内側」を議論しよう

 ……といったポイントになる。

 これらの前向きな方策について(特に④について)考える際には、前回と今回の議論のように「自動化技術」をブラックボックスとして外側から眺めているだけでは、ラチがあかない。

 「自動化技術」そのものも、私たち人間が開発・運用してきたものなのだから、AIの「外側」の話はこれくらいにして、次回からはAIの「内側」に入っていくことにしよう。

※文末注:本稿の執筆に当たっては、豪クイーンズランド大学のマクロ経済学者である田中聡史氏と、米エール大学の労働経済学者である成田悠輔氏から有益なコメントを頂いた。この場を借りて感謝したい。