……というわけで、AIが労働の需給にもたらすインパクトは、「消える職業」と「生まれる職業」、そして「人口減少スピード」の三つ巴のバランス次第ということだ。
私たちが本当に考えるべきこと
もちろん、たとえばエレベーターの「運転」と「管理」は別の職種であり、タスク構成も必要なスキルも異なる。だから、エレベーターガールが「エレベーター自動運転プログラムを設計する仕事」に、いきなり転職できるとは限らない。もう少し一般論として考えても、
- 「無くなる仕事」と「新たな仕事」は、別物だ。
- また自動化で「人余りになる仕事」と、人口減少で「人手不足になる仕事」にも、ズレがあるだろう。
となると、もし私たちが「AI失業」と「人口減少」について真面目に考えるのであれば、社会全体として重視すべきなのは、
- 仕事と人手の出会いを、業界・社会全体でスムーズにする工夫。
- いまある人手でこなせるように、仕事のカタチを柔軟に変化させる工夫。
- 「新たな仕事」に柔軟に対応できるような、新スキル習得の場所と機会。
- 「人手不足の分野を狙って自動化を進める」ような、研究開発と企業活動。

……といったポイントになる。
これらの前向きな方策について(特に④について)考える際には、前回と今回の議論のように「自動化技術」をブラックボックスとして外側から眺めているだけでは、ラチがあかない。
「自動化技術」そのものも、私たち人間が開発・運用してきたものなのだから、AIの「外側」の話はこれくらいにして、次回からはAIの「内側」に入っていくことにしよう。
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