先に紹介した研究が扱ったのは、過去のアメリカとドイツ、すなわち、「国全体の人口が増加している局面」であった。人口が増加すると、だいたい労働力(労働の供給)も増える。だが、ひとたび将来に目を転じると、日本や韓国、それにドイツを筆頭に一部の欧米諸国も、すでに少子高齢化と人口減少のステージに突入している。

 言いかえると、1国内に存在する労働力(労働供給)は、どの国でも減少傾向にある(ただし、アフリカの多くの国々を除く)。

AI失業 vs 人口減少

 ……ということは、AIによるタスク自動化によって労働需要が減る(可能性がある)一方で、人口の高齢化によって労働供給も(現実にすでに)減りつつあるわけだ。

  • 片や、「AIで仕事がなくなる!」
  • 片や、「高齢化で人手が足りない!」

 これらは本当に、現代社会を悩ます2大マクロ問題となるのだろうか? 冷静に(ただしある程度ザックリ単純に)考えてみると、2つの悩みは両立し得ない。「自動化によって人手不足を補う」ことさえできれば、2大問題はどちらも解消し、一件落着となるかもしれない。

 このような楽観的なシナリオを強調したのが、米グーグルのチーフエコノミストであるハル・ヴァリアン氏が発表した「自動化と生殖」(原題は「Automation vs Procreation」)という論文だ。まあ、AIを開発する企業に勤めている彼の立場を考えると、このような「ゆるふわ」風味の論文それ自体は、多少割り引いて読んだ方が賢明だろう。

注:発表時の動画はこちら

 しかし、「高齢化が進む国ほど、ロボットの開発と導入も盛んである」という別の研究もある。というか、日本はまさにその世界最前線にある国だ。だから私自身の意見としては、日本の企業や家庭(そしてもちろん政府)は、どんどん実験的な取り組みを進めるべきだと思う。

注:「人口動態と自動化」(原題は「Demographics and Automation」)は、前掲の「自動化と新タスク」と同様に、アセモグル氏とボストン大学のパスクアル・レストレポ氏の共著による論文である。